AST(00中編) ゆめ グラハムの出勤はいつも皆より少しだけ遅い。 家が近いため、その分夜遅くまで働いているからだ。 仕込みも大概は夜にやってしまっている。 *** 何時ものように、既に慌ただしい店内をのんびりと優雅に出勤すると、何やら甘い空気を感じた。 「………ん?」 アリーのドルチェとは違う。 やけに気になってその香りを辿ると、奥の物置になっている部屋に行き着いた。 (おや………) 部屋を覗き込んだグラハムの表情が思わず緩んだ。 グラハムの知らないあいだに、いつの間にか部屋はキッズルームになっていたようだ。 そこには、自分と同じ背丈くらいの猫のぬいぐるみと一緒にニールが寝ていた。 グラハムが覗き込んでも気付かずに、大の字で気持ち良さそうに寝ている。 「無防備だな」 安心しきって寝ているニールにグラハムは微笑むと、はだけているブランケットを掛け直した。 「……………」 すると、ニールはむにむにと口を動かす仕草をする。 何か食べている夢を見ているのだろうか。 それが自分の作ったものだったら幸せだ。 「ランチは楽しみにしていたまえ、姫」 指で唇に触れると、少しだけ吸われた。 もう片手で頬に触れると、子供特有の柔らかい感触がした。 甘いバニラの香り。 「美味しそうだな」 グラハムは笑うとニールの頬に口付けを落とした。 「おやすみ……姫」 -------- 誰か(特にアレルヤ)が見てたら大事に(笑) [*前へ][次へ#] [戻る] |