AST(00中編) いばしょ 昨日、ニールはライルと一緒に初めてクッキーを作った。 アイシングされた山程のクッキーはとても美味しかったけれど、流石に二人では食べきれない。 というわけで、アレルヤはニールが作ったクッキーを職場へと持って行った。 *** 「おー!これは凄いな」 昼休み、テーブルの角に『御自由に食べてください』というメモと共にクッキーの籠を置く。 控え目に置いたつもりだったが、パステルカラーの型抜きクッキーはキラキラと目立っていた。 特記がなくてもニールが作ったことは一目瞭然だ。 「久々に見たな……この手の手作りクッキー」 色とりどりの甘そうなそれに、大人達は苦笑しつつもどこか嬉しそうだ。 「しかし、良い色使いだ」 「センスが良い」 「ベースはライル・ディランディだろ?」 「じゃあ、味は大丈夫だな」 皆口々にコメントを言いながらクッキーを食べる。 「うわ、甘いなあっ!」 「お子ちゃまな味だ」 「懐かしいよ」 「お、逆に生地は甘味が殆どないぞ」 「流石だな」 それをアレルヤは嬉しそうに見ていた。 既にクッキーは争奪戦だ。 このままいけば直ぐになくなるだろう。 (良かったね、ニール) すると、そのクッキーを片手に数個キープした店長が来た。 「アレルヤ」 「はい」 「今日チビは?」 「御留守番してます」 「一人でか?」 「今日は一人です」 クッキーをあげてもいいか、とニールに了解を取った時は凄く興奮して首を縦に振っていた。 今日も出てくる時に一生懸命に手を振っていて、ニールもクッキーの行く末が気になっているのがわかった。 皆で美味しく食べたと言ったらきっと凄く喜ぶだろう。 (帰ったら話してあげよう) 「おい、聞いてるか?」 「は、はいっ」 店長と話の途中だったことを思い出して、アレルヤは緩んだ頬を引き締めた。 「だからな」 そんなアレルヤに気付かず、店長は咳払いをする。 「あいつは大人しいし邪魔にはならないし、なんていうか……あいつらの士気も上がる」 「?はい」 どうやらニールのことを言っているらしいが、意図することが良く分からない。 「クッキーも美味いし、だな」 「はい……?」 アレルヤは頭の上に、はてなを飛ばす。 遠回しに何かを言われている気はするのだが。 「店長、鈍いアレルヤにはハッキリ言わないと伝わりませんよ」 「うるせぇっ!」 店長は何故か赤くなりながら、早口でアレルヤに言った。 「控え室を一つ片付けた!」 「?」 そういえば最近何かガタガタしていたなあ、と思った瞬間。 「お守りがいないときはここに連れて来い!」 「え……」 「以上!」 店長は言い切ると、バタバタとアレルヤが声を掛ける暇もなく行ってしまった。 アレルヤが周りを見回すと、皆ニヤニヤと笑っていて。 誰一人ニールを拒絶していない。 「…………っ」 アレルヤは零れ落ちそうな涙を拭うと、深々と頭を下げた。 「ニール共々、宜しくお願い致します」 そんなアレルヤの頭を誰かがバシリと叩いた。 「宜しくされるのは、あいつだけで良い」 「アリーさんっ」 「………前日には連絡しろよな」 アリーの手には空になった籠があった。 「プリンを一つ多く仕込んどくから」 アレルヤはその籠を受け取りながら笑った。 -------- ニールの一人で御留守番はなくなりました〜! [*前へ][次へ#] [戻る] |