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AST(00中編)
おともだち
「どうしたの?ニール」



その日はアレルヤのオフの日だった。
二人でゆっくりと朝御飯を食べて、その後はニールを膝に乗せて絵本を読んであげた。
ニールは絵本に出てきた動物をクレヨンで描いて、はしゃいでいたのに。

アレルヤが昼ご飯の支度をしてキッチンから戻ってきたときには、もう大きい目に大粒の涙を溜めていた。


「ニール?どこか痛いの?」


アレルヤが抱き上げてあやしても、グスグス泣いて顔を埋めたままだ。
どうやら、どこかが痛いというわけではないみたいだが。
アレルヤは困ったように、ポンポンとニールの背中を叩いては繰り返しあやす。
こういうとき、ニールのことを察してあげられない自分を歯痒く思う。

(うーん……)

肩の辺りが涙やら他の何やらで濡れてきたのを感じながら、アレルヤは首を捻った。
(何か怖いものでも見たのかなあ)
しかし今テレビは付いていないし、勿論そんな絵本もない。
スンスンと鼻を鳴らしながら泣いているニールの頭を優しく撫でる。
ふわふわした髪の毛に頬が緩んだ。


(ひとまず落ち着くまでは泣かせてあげよう)


「よしよし」
暫く抱っこしてあげてるとニールも段々落ち着いてきた。
「…………」
くいくいとアレルヤの服を引っ張る。
「?」
降りたがってるみたいなので降ろしてあげると、握り締めていた手から何かをアレルヤに見せた。

「ボタン?」

大きめの、木で出来た丸いボタン。
どこかで見たような、と思っているとニールがボロボロ涙を零しながら、ソファーから猫のぬいぐるみを持ってきた。
「……ああ!」
アレルヤは漸く思い出した。
ボタンは猫の腕に付いていたものだ。
ということは。
おずおずとニールがぬいぐるみの片腕をアレルヤに差し出す。
「…………」
腕は見事に取れてしまっていた。

(あーなるほどね)

しゅんとしているニールを見て、今までの愚図り方が納得出来た。
「いつも一緒に遊んでたから取れちゃって悲しかったんだね」
ニールはコクコク頷くと、再度アレルヤに抱き着いてまた愚図り始めた。
「だ、だだだ大丈夫!」
アレルヤは、一瞬ハレルヤに直してもらおうと言いかけて……その言葉を飲み込む。



「僕が、直してあげるよ」





***





「で」



「…………」
「腕を逆向きに付けたんだな」
「………うん」
夕方になって顔を見せたハレルヤは、変な方向に付いている猫の腕を眺めて溜息を吐いた。
「直してくれる?」
「んー……」
ハレルヤは曖昧に言って、ニールを見た。
スヤスヤと気持ち良さそうに少し遅いお昼寝をしている。
その腕には猫のぬいぐるみがしっかりと抱き締められていた。
「お前が直してくれて嬉しかったんじゃないか?」
「え?」
時折むにむにと口元を緩ませて、幸せそうに寝ている。
さっきまで大泣きしていたのが嘘の様だ。


「……このままで良いんじゃねぇの?」



ハレルヤの言葉に、アレルヤは照れた様にはにかんだ。








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ちなみにボタンは食べません(笑)
ヘタレなアレパパですが、ニールにはヒーローです!





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あきゅろす。
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