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AST(00中編)
ははのひ
アレルヤは困っていた。


「………」


じーっと見つめられながらニールから渡されたものは、画用紙に描かれた赤い大きな丸。
(しかもぐちゃぐちゃな円)
「これ、僕に?」
「…………」
コクコクと頷くニールの頭を撫でて、アレルヤは引きつった笑みをなんとか浮かべた。

「あ、ありがとう」

お礼を言うと、ニールは満足げにコクリと頷いてまた御絵描きを始めた。



***



「………何だと思う?」


午後になって連れ立ってやってきたハレルヤとライルに、アレルヤは絵を見せてみた。
「さあ?」
「あいつは茶色の丸をパンケーキっていうやつだぜ」
絵を見たハレルヤとライルも、全くわからずに首を傾げる。
ニールのことだから『食べ物なんじゃないか?』とはなんとなく思うのだが、ここまで真っ赤なものは浮ばない。
仮にトマトだったとしても、意味ありげにアレルヤに渡す意味も分からない。

「まあ、本人はご機嫌だから良いんじゃねぇの?」
「そうだね」

アレルヤとハレルヤは、体を揺らしながらご機嫌で御絵描きをしているニールを微笑ましく見つめる。
どうやら新しく買ってあげたクレヨンが嬉しくて仕方ないらしい。

するといつの間にかライルがニールに近寄り、顔を覗き込んでいた。
「なあ、あの絵なに?」
「ライル!」
ストレートに言うライルにアレルヤは焦り、ハレルヤは深い溜息を吐く。
「…………?」
聞かれたニールはきょとんとしてから、キョロキョロと辺りを見回して……チラシらしき紙をライルに渡した。

「あーなるほど」

ライルはそれを見て優しく微笑むとニールの頭を撫でた。
チラシには母親にカーネーションを渡す子供のイラストが描いてあった。

『大好きなあの人に赤いカーネーションを贈ろう』

その文字は読めないだろうが、イラストから何かを感じたのだろう。
「母の日ね」
覗き込んでいたハレルヤも納得する。


「ニール…っ」


アレルヤは感激してニールをぎゅっと抱き締めた。
「僕も大好きだよっ!」
「……いや、だから文字は読めないだろ」
ハレルヤは突っ込んだが、仲良し親子は全く気にしない。
ニールもコクコク頷くと、嬉しそうにアレルヤに抱き着いた。



「……来月は父の日だね」
「また貰うんだろうな」
ハレルヤとライルはチラシを片手に苦笑すると、少しだけアレルヤを羨ましく思う。



その後。
ハレルヤとライルもカーネーションの絵をニールから貰い、それを大切に大切に持ち帰った。






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