家族ゲーム(00連載)
16(2)
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「お?」
店長が店に戻ってくると、そこは異様な雰囲気に包まれていた。
「こんにちは」
「おう、ライル」
「…………」
ライルに手を上げながらチラリとニールを見ると、目にいっぱい涙を溜めている。
しかしライルは何事もなかったかのようにコーヒーを飲んでいるし、アレルヤもカウンター裏で皿を拭いていた。
「ニールどうした?泣いて」
店長がニールの頭を優しく撫でると、ニールは顔を歪めた。
「……泣いてない」
「どこが」
店長はニールの頬を軽く抓る。するとポロポロ涙が零れた。
「泣きたいときは泣いちまえ」
「…………っ」
「で、どうした?」
ニールは涙を拭って涙声で言った。
「アレルヤが……っ」
その言葉に店長は目を丸くしてアレルヤを見た。
「お前、ニールを泣かせるとは……中々ツワモノだな」
アレルヤは慌てて言う。
「な、泣かせたわけじゃ」
「しかもライルの前で」
しかし誰かに泣かされてぐすぐすとしているニールを、完全に無視しているライルなんて珍しい。
「アレルヤに説教されたんですよ」
「説教?」
「わかってるんでしょ?」
それが顔の傷のことだということに気付いて苦笑いする。
ライルは渋い顔をしたまま冷たく言った。
「ニールはそれくらい言われたほうがいいんだ」
「………っ」
漸く止まったニールの涙がまた零れ落ちる。
店長は溜息を吐いてオシボリをニールに渡した。
「顔洗ってこい」
「………うん」
ニールはのろのろと立ち上がり、俯いて化粧室へと向かった。
その背中はションボリとして見える。
「流石にライルにもアレルヤにも絞られたらニールも可哀相じゃないか?」
アレルヤとライルは気まずそうな顔をした。
「あいつはトラブル体質だ」
「………」
「色んな意味で目立つから、ニールが何もしなくても巻き込まれるんだよ」
覚えがあるだけに反論出来ない。
「大体大人しく部屋に閉じ込めておくなんて、ニールも退屈だろうに」
「……それは、」
いちいち構うような歳でもないのに、度を越して心配し過ぎているのは自分達のほうなのだ。
その自覚はあるのだが、前回のように怪我を増やされるのも堪らない。
「いい歳した男が出歩いたり怪我したくらいで怒るなら、鍵でもかけて監禁しちまえ」
「店長……」
「それが出来ないなら頭ごなしに怒るなよ?」
「……はい」
アレルヤとライルが神妙に頷いた時、泣き腫らした目でニールが戻ってきた。
「帰る……」
もそもそと言ってニールは店長に支払いをしようとするが、それを店長は止めた。
「今日は良いから」
「でも……」
「元気出せ」
「はい」
ニールはふにゃりと笑うと頷いて店を出て行った。
「ニール!」
慌ててその後をライルが追う。
アレルヤは胸が痛んだ。
(ここに来たときのニールは楽しそうで明るかったのに……)
「お前も帰っていいぞ」
「え?」
仕事にならないだろ、と笑う店長にアレルヤは急いでエプロンを取ると頭を下げた。
「失礼しますっ」
「はいよ」
一気に静かになった店に店長は苦笑いした。
***
「……………」
トボトボと歩くニールの数歩後ろを、アレルヤとライルはハラハラしながら歩いていた。
ただでさえよろめくニールが、俯きながら歩いてるため危なくて気が気ではない。
「……ニール、手」
「や……」
「ニール」
「………」
ニールはアレルヤとライルの手を絶対に握ろうとはしなかった。
そのニールが急に走り出した。
「ニール!」
ライルは驚いて掴まえようとしたが前を見て止まる。
「ハレルヤ!」
ニールは勢い良く目の前の人物を呼ぶと抱き着いた。
「おっと、」
勢い良く飛び付いてきたニールを難なく受け止める。
「どうした?」
「…………」
ハレルヤは、ぎゅっとしがみついたまま離れないニールの背中をポンポンと叩いた。
「こいつらに苛められたか?」
「…………」
ニールはぶんぶんと首を横に振って、ポツポツと言った。
「俺が……悪かった、から……嫌われ、た…」
「ニール!」
「嫌ってなんか……っ」
アレルヤとライルは漸くニールの気持ちに気付いた。
まさかそんなことを考えているとは思わなかった。
「で……お前は、どうするんだ?」
ショックを受けている二人を無視してハレルヤはニールに聞く。
するとニールははっきりと言った。
「大人しくするし、言われたことも守る」
「そうか」
「うん……」
ニールは差し出されたハレルヤの手を握り締めた。
そしてアレルヤとライルを振り返る。
「ごめんな……ちゃんと、するから」
「ニール……」
「良かったな、お前達の思い通りだぜ?」
「………」
ハレルヤの言葉は正しい。
しかし、アレルヤとライルに何かが突き刺さる。
ニールのことも自分達の願った通りなのに、胸が痛むのを感じていた。
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また沈んで振り出しに戻る;
心配なあまり怒り過ぎて反省する攻めと怒られ過ぎて反省する受け(笑)
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