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■リクエスト企画2011■
ハレニル【ニールを甘やかすハレルヤ】
あ、と思ったときは手からボウルが離れていた。



ガランガランという金属質な音がこめかみに響いて俺は眉をしかめる。
拾おうと思ってしゃがみ込んだまま深く溜息を吐いた。
床には傷はついていない。
ボウルの中身もまだ空だったのは不幸中の幸いだ。
ただ部屋中に響いた音は取り返しがつかない。
「………なんだ、今の音」
いつも通り不機嫌そうな声が背後から聞こえた。
やっぱり聞こえていたか。
しゃがみ込んだ体勢で振り返るとぎゅっと眉間にしわを寄せたハレルヤが俺を見下ろしていた。
「ははは、落とした」
「見ればわかる」
だったら聞くなよ、という言葉を俺は大人だという理由でなんとか抑える。
相手はこの部屋の主で、仕事中だったのだ。
邪魔をしたのは謝るべきなのだろう。
なにしろ【小説家】という特殊な職業の彼は気を散らされることを極端に嫌がるのだ。
良いアイデアが飛んでしまったら申し訳ない。
だから物音には気をつけていたのだが……金属の音は響く。
「悪い、今かたづけ、る」
「………お前、顔悪い」
「はあっ!?」
「……顔色」
むすっと呟いて俺の体はハレルヤに抱き上げられていた。
ひょいと持ち上げられて同じ男として屈辱を感じなくもないがもう慣れた。
それにこいつの趣味は「筋トレ」なのだ、可哀相なことに。
「………っ」
足が床から離れると眩暈が酷くなる。
俺は唇を噛み締めてハレルヤにしがみついた。
そうだ、立ちくらみがしてボウルを落としたのだ。
「お前、最近忙しいって言ってただろ」
「まあな、でもそれも昨日で」
「体調が良くないなら来るな」
少しカチンときた。
そりゃ迷惑をかけたし悪いとは思っている。
だけど久しぶりに時間が出来たんだからいつも身の回り、主に食生活に無頓着な恋人に手料理のひとつでもと思ったのが。
この鈍感にはわからないのだろうか。
「たまには手料理でもって」
「デリバリーで良い」
俺の一方的な愛情はズバッと一刀両断された。
「どうせさほどうまくないんだ」
更に深手を負う。
「そ、うだよな」
俺は苦笑する。
こいつらしいと思った。
優しい言葉なんか有り得ない。
いつだって真実だけ。
そういうところが俺は大好きで。
今は悲しい。
「寝ろ」
仮眠用に与えられていた部屋のベッドに運ばれて、俺は頷いた。
帰れって言われなかっただけマシなのだ。
去っていく瞬間、そっと俺の前髪を綺麗な指が撫でていった。
じんわりと感じた温もりが何故だか優しくて。
俺はそっと目を伏せた。







***




どれくらい眠っていたのだろうか。

目が覚めると調度立ち上がったハレルヤと目が合った。
「ハレルヤ……」
いつの間にか部屋にハレルヤがいたことにびっくりする。
「今、飯持ってきたところだ」
食うか?と言われて俺は頷いた。
そういえば作り損ねたからまだ食べていない。
「あ、あ……ありがとう」
何をデリバリーしたのだろうか。
ピザとかだとちょっと辛い。
でもデリバリーで体に優しいものなど期待できない。
「………」
内心溜息を吐きながらハレルヤから受け取った器は、どこか見覚えがあった。
「これ……」
器には卵粥がたっぷりと入っている。
といっても米は殆ど形がなくて糊状態だし卵は固まってボロボロしていた。
そして何故か食卓塩。
ハレルヤは一口食べて、いつもより更にしわを深くする。
「お前の作った飯のほうがまだマシだな」
「え?」
俺は卵粥を見つめた。
ほわほわと湯気が部屋を曇らせる。
いや違う。
ポタリと涙が粥に零れた。
「……治ったらお前が作れよ」
俺は頷いて粥を掻き込む。
胸が詰まって言葉にならなかったのだ。
「………っ」
程よく冷めた粥はなんだか甘く感じた。
今まで食べた粥の中で、一番美味しくて。
隣で黙々と食べているハレルヤに『美味しい』と言うと『黙って食え』と言われた。



「………お前の飯もうめぇよ」
「え?」
「うるせぇ」




言葉とは反対に頬を撫でた手の平は暖かくて、優しかった。


















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リクエストありがとうございました!
リクでハレニルを書くのって珍しい!
もしかして初?ではないか?


ニールを甘やかすハレルヤ……ニールを甘やかす……_| ̄|○


私的にハレルヤは甘くないので難しかったです!
でも楽しく書けました!
ど、どうでしょうかヽ(´Д`;≡;´Д`)丿
あまり書かないCPはいつもにましてドキドキするし自信がありません(´・ω・`)
楽しんでいただけたら幸いです。



あれ?もしかしてハレルヤ「ニール」って一度も呼んでない?/(^o^)\






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