■リクエスト企画2010■\(^o^)/ 姫様【家族ゲーム】1/2 【ハレルヤの女友達にヤキモチを焼くライルとハレルヤの喧嘩と仲直り(裏)】 「ハレルヤ!」 甲高い声が響いた。 思いもしなかった。 こいつの世界に、俺の知らない奴等がいるなんて。 *** 「ライル!」 「ニール」 安息日に隣に住む兄とわざわざ待ち合わせをしたのには理由がある。 ニールに急に『ライルも行こう』とあいつらの大学に誘われたのだ。 ニールはバイト帰りに寄るつもりらしかったが、俺は全く乗り気ではなかった。 貴重な休みを潰す気は無い。 しかし、断った瞬間ニールの表情が曇った。 しゅんと俯かれて、ピトッとくっつかれて、グスリと涙混じりの声で。 『俺一人じゃ……心細い』と言われたら。 「…………」 思い出すだけで深い溜息が出る。 「ライル、ありがとなっ!」 そんな兄は嬉しそうに、俺の腕に自分の腕を絡めながら校内へと進入した。 人目を引いているが気にしないことにする。 それを指摘したらニールが離れてしまうかもしれない。 「あいつらに弁当届けたら、俺達は何処かで飯食って帰ろうぜ」 「そうだね」 アレルヤ曰く、ニールが大学が苦手なのは本当らしい。 そんなニールが喜んでいるのだから良いか。 そんな軽い気持ちでいた。 大学の中というのは独特な雰囲気がある。 懐かしいな、と少しだけ感じた。 でもニールにはこの感じが苦手なのかもしれない。 チラチラと向けられる視線に黙り込んだニールを背中に庇うようにして歩く。 するとニールは頬をピンクに染めて、またくっついてきた。 「…………」 「ライル?」 なんなのだろう。 この可愛い生き物は。 「あのな!前ライルに写メ送っただろ?」 「ああ、猫の?」 「ハレルヤの!」 どう見ても猫がメインだったけれど。 「素直じゃないな、ライルは」 待受画像にしてるくせに、と笑われて俺は顔が熱くなるのがわかった。 待受にしているのは猫たちが可愛かったからだ。 断じてハレルヤの気の緩んだ寝顔ではない。 「後でハレルヤに連れてってもらえよ」 「何処へ」 「にゃんこの園」 ニールのネーミングに笑みが浮かぶ。 多分ニールはアレルヤにこっそり連れていってもらったのだろう。 写メが如何にも『隠し撮りです』といったアングルだった。 「あ、ハレルヤ?」 「え?」 急にニールがそう言って、日の当たらない暗い廊下を指差した。 その方向を反射的に見る。 (あれは………) 俺がハレルヤだと認識するのとほぼ同時にはっきりと聞こえた。 「ハレルヤ!」 甲高い女の声が廊下に響いた。 いや、俺の頭に響いた。 俺の視界で、ハレルヤが、俺の知らない女と、何かを話している。 ガンガンと、高くて甘いキャンディーみたいな声が響く。 ハレルヤの視界には今……。 (……………俺は、) なんでだろう。 ハレルヤは他人なんて興味が無い人間で。 お構いなしに無視をして。 団体行動なんて無理で。 (俺しか、目に入らないって) 思っていた。 俺の知らないハレルヤの『日常』が確かにここにはある。 胸がズキズキと痛んだ。 苦しくて息が出来ない。 「……ライル?」 ニールが驚いたように俺を見た。 「なん、で……泣きそうな顔してるんだ?」 ニールの言葉に更に視界がぼやける。 「ライル……」 その声が聞こえたのか、遠くでハレルヤが訝しげにこっちを見たのが微かな動きでわかった。 そして、目が合うと眉を顰めて真直ぐ向かってきた。 「来るな……っ」 俺は手に持っていた袋をハレルヤに思い切り投げ付ける。 「!!」 バシッと強烈な音がして、それはハレルヤに当たった。 短い悲鳴が奴の背後から聞こえて、俺は歯ぎしりをする。 (あの声を聞きたくない) 「ラ、ライルっ!待って!」 俺はニールの制止を振り切って踵を返した。 「お前は、アレルヤのとこに行ってろ」 ハレルヤがニールにそう言って、後ろを付いて来るのがわかった。 *** 「痛ってぇなあ」 「…………」 「おい、待てよ」 「…………」 「俺の話も聞けよ」 話? 話すことは何もないし、聞くことも何もない。 「そもそも、なんでここにいるんだ?」 それはニールに聞いてくれ。 俺はここに来るつもりは全くなかった。 「お前の姿見た時……すげぇびっくりした」 何処が。 いつも通りの不機嫌そうな感じだった。 「馬鹿みたいに浮かれた」 「え?」 「瞬間、これだ」 ハレルヤは引きつった笑みを浮かべて、投げ付けた袋を俺に突き付けた。 「何のプレイだよ、焦らしか?SMか?」 「知るかっ」 袋の中身を思い出して、俺は慌てて顔を逸す。 そして更に歩き出そうとしたところをハレルヤに止められた。 「そっちじゃねぇよ」 「は?」 グイグイと腕を引かれてあっという間に外に出る。 「ちょっ、何処行くんだ!」 敷地内なのはわかるが段々と周りに色んな植物が茂ってきた。 つまりは藪の中だ。 そんな物語があったな、と半ば諦めてハレルヤの好きにさせることにした。 「ここ、入れ」 「はあっ?」 入れと言われた場所は、道があるわけではなく単なる叢で。 でも後ろはハレルヤが塞いでいるため、俺は溜息を吐いて中へ進んだ。 自分の周りには強引な人種が多いと思う。 顔を切らないように気をつけながら進むと、急に視界が明るく開けた。 「な、なんだここ」 ポッカリとここだけ抜き取られたように空間がある。 周りは藪なのに、日光が燦々と降り注いでいた。 そしてその正に猫の額ほどの空間には。 「………猫だらけだ」 ごろごろと転がっている昼寝中の猫達に、思わず頬が緩む。 そうか、ここが『にゃんこの園』か。 「……漸く笑ったな」 「なに?」 「いや」 近付いて猫達を見ていると、その中の一匹が擦り寄ってくる。 茶寅でまだ小さい。 「みーみー」 まだちゃんと啼けないのが可愛くて、俺はそっとその頭を撫でた。 お腹が空いているのか、俺の指をちゅーちゅー吸いだす。 「可愛い……」 すると、後ろから急に身体を抱きすくめられた。 「うわっ」 「猫なんか構ってんじゃねぇよ」 グルリと視界が変わる。 芝生のサワサワした感触と、緑から切り取られた青い空。 それを覆い隠すようにハレルヤの顔が近付いてきた。 >>> ---------- すいません(汗) 長くなったので一端ここで; 次回は裏です。 [*前へ][次へ#] [戻る] |