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■リクエスト企画2010■\(^o^)/
キナ様【AST】
【ニールの初めてのおつかい】






「準備はいい?ニール」





ニールはアレルヤに渡されたお金をくまさんポシェットにしまった。
アレルヤはそれを確認してから、怖いくらい真剣な顔でニールを見る。
「知らない人についていっちゃダメだよ?」
コクコク
「もし、どうしてもお砂糖がわからなかったら帰ってきて良いんだからね」
コクコク
神妙に頷くニールを見て、アレルヤの顔が泣きそうに歪んだ。
「あー!やっぱりやめ…っ」
「馬鹿か」
「痛っ」
横で二人のやり取りを聞いていたハレルヤがアレルヤの頭をはたく。
「こいつが頑張ろうとしてるのに邪魔してどうする!」
「……そうだね」
ライルも心底呆れた様に溜息を吐いてアレルヤに言う。
「可愛い子には旅をさせろって言うし、自立心も大切だろ」
「……そうだけど」
煮え切らない返事にハレルヤが畳み掛ける。
「すぐそこまで砂糖買いに行くだけじゃねぇか」
「……すぐそこ、かなあ」
『初めてのおつかい』にしては些か距離がある気がする。
座り込んで落ち込むアレルヤの頭を、ニールは優しくなでなでした。
「ニール……」
「ニールは一人でお買い物出来るよな」
ライルの言葉に力強くニールは頷くと、ハレルヤが書いた地図を高々と掲げた。
「そうそう、覚えたもんな」
コクコク
「よし、行って来い!」
「!!」
「頑張ってねー!」
ニールはビシリと姿勢を正すと三人に手を振ってドアを出て行った。


「いってらっしゃい!」




パタン



「…………」






「行ったか?」
「ああ」
「よし、行くぞ!」
何やらゴソゴソしながら出掛ける支度をし始めたハレルヤとライルに、アレルヤはついていけない。
「え?え?何処に?」


「「後付けるに決まってるだろっ」」


「………えー」







***



キョロキョロしながら不安げに歩くニールの後ろを、コソコソハラハラと三人はつけていた。
「あー、あれは人見知りが裏目に出てるな」
「ああ!ニール泣きそうっ!」
「……大声出すと見つかるぞ?」



その時、俯きながらポシェットを握り締めて歩くニールの肩を叩いた人物がいた。
「姫?どうしたんだい?」
「!!」
ニールが顔を上げると、グラハムが不思議そうにニールを見つめている。
見知った人物にニールはふにゃりと笑うと、ギューッと抱き着いた。
グラハムはその小さな身体をそっと抱き締め返す。
「大胆だね、姫」
「?」
「一人なのかな?」
コクコク


それを見て焦ったのは保護者三人組だ。
「………ヤバい」
「知らない奴じゃないけど危険だっ」
「つ、連れ去られちゃうかも!」


微かに聞こえた声の方向にグラハムはチラリと視線を送る。
「……なるほど」
全てを把握したグラハムはニールの髪をゆっくりと撫でた。
「頑張るんだよ、姫」
コクコク


手を振って、さっきより元気良く歩き始めたニールの後ろ姿を見送りながらグラハムは微笑した。


「さて、私も後を付けるとしようか」







それから数分後。
ニールはケーキ屋さんの前で立ち尽くしていた。
「……………」
ショーウィンドウに綺麗に並べられたプリンの前からピクリとも動かない。


「………涎が垂れそうだな」
「あいつ、プリンちらつかされたら誰にでも着いていくんじゃねぇか?」
「……」
「……」
「……誰か否定してやれよ」
お目当てのスーパーはすぐ隣なのだが、意外な罠が仕掛けられていた。
「違うルートにすれば良かった」
「いや、あちらにも姫が引っ掛かりそうなケーキ屋はある」
「う、うーん」



「いらっしゃいませ」
「!!」
「あら?」
ニールがじーっとプリンを見つめていると、ケーキ屋の店員が出てきてニールを見つける。
そして優しく微笑んだ。
「僕、ケーキ買いに来たの?」
「……っ」
ニールはぶんぶんと頭を横に振ると、真っ赤になってペコリと頭を下げた。
そして、あわあわとスーパーへと駆けていく。




それを見送ってから、アレルヤはケーキ屋へと向かった。
「すいません、そのプリンください」
「はい!有り難うございます」
アレルヤはニールが見つめていたプリンを買って微笑んだ。





***



「後は戻るだけだな」

スーパーから小さな袋を持ってご機嫌で出てきたニールに一同ほっとする。
ハラハラしまくりの『初めてのおつかい』は無事に終わりを迎えそうだった。
後はバレない様にニールより早く帰らなければ、とアレルヤが息を吐いたとき。


「!!」


ドン、と誰かがニールにぶつかった。
よろめいたニールにアレルヤは息を飲む。
邪魔だと言う様にジロリと睨まれて、ニールがビクリとした瞬間に手から地図が舞い落ちた。
「………」
ニールは怯えた表情で急いで歩道の角に隠れる。
ビクビクとしながら縮こまるニールに、ハレルヤとライルも唇を噛み締めた。
「………っ」
急に恐怖に襲われたのだろう。
うるっとニールの瞳が弛んだ。
そして、辺りをキョロキョロ見回す。
見つかりそうになり思わず隠れてしまったが、胸がズキズキと痛んだ。


「ニール……っ」
「流石にやばいか」


ハレルヤが走り寄ろうとした時、その手をグラハムが止めた。
ハレルヤが眉をしかめると、グラハムが笑ってニールの方を指差す。



アンアンアンッ!



「!!」



「ハロ!?」
「なんで!?」
すると、遠くの路地から店長が気まずげにこっちを見て手を上げたのが見えた。
いつの間に尾行していたのか。
皆で苦笑しながら、御礼の気持ちを込めて頭を下げる。
どうやら見兼ねてハロを投入してくれたらしい。


「あんあんっ」
ニールは涙を拭って、笑顔でハロの頭を撫でた。
ハロはしっぽを千切れそうなほど振ると、ニールの袖を引っ張る。
ニールはコクコク頷くとハロの後をついていった。


「……良かったっ」
「ハロに感謝だな」
「明日は私が美味しいご飯を作ってあげよう」








「で?」


「………すまん」
保護者達は見慣れた店を遠目に眺めながら溜息を吐く。
「あんっ」
ハロはニールを自分の家へ連れていってしまったのだ。
しかもそこには。


「あ?何だ、チビ」


仕込みに来ていたアリーが調度帰るところだったのだ。
「あいつ!ニールのことチビって言いやがった!」
「……お前もよく言うだろ?」
「ラ、ライル!落ち着いてっ」



「背後霊だらけだな」
「?」
アリーは嫌そうな顔をして、ニールの額に軽くでこピンをする。
「!!」
ニールはおでこを押さえて目をパチパチさせた。
「ここからお前の家まではわかるな?」
コクコク
「ハロ連れて早く帰れ」
砂糖は溶ける、とアリーが言うとニールはあわあわとし始める。
アリーは鞄の中からチョコレートを取り出すと、ニールの口の中に放り込んだ。
「!!」
「落ち着け、慌てるなよ?」
コクコク
「車や変質者に気をつけろ」
アリーはニールのポシェットにチョコレートをたくさん詰める。
それからハロの頭を撫でた。
「ニールのこと宜しくな」
「あんっ」



チョコレートにニコニコしながらハロと一緒に歩き始めたニールの後ろを、ゾロゾロとついていく保護者の列にアリーは頭が痛くなる。



「………変質者はもう手遅れか」





***



「ニール!」



ニールが戻ると、そこには腕を広げてアレルヤが待っていた。
「!!」
ニールは迷わずにその腕に飛び込む。
そして、持っていた砂糖をアレルヤに渡した。
アレルヤは思わず泣きそうになる。


「ありがとう!ニール!」


ギュッと強く抱き締めるとニールも安心した様に笑った。


ハロは店長とハレルヤの間で『ほめて!ほめて!』とわふわふした。
「ハロ!良くやったな」
「おやつだぞ」
その言葉にニールも反応する。
アレルヤは笑うとテーブルの上の白い箱からプリンを取り出した。


「はい、プリン」


「!!」
驚いた様にニールがアレルヤを見る。
そして差し出されたプリンをキラキラとした目で受け取った。
「頑張ったな」
「偉いよ、姫」
ライルとグラハムからも褒められて、ニールはてれてれと顔を赤く染める。



「また、おつかい頼んでも良い?」




アレルヤが少しだけ緊張しながら言った問いに、ニールは満面の笑みで大きく頷いた。










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キナ様>>>
この度はリクエスト有り難うございました(*´∀`*)
いつもASTを読んでいただき有り難うございます〜!
毎回キュンキュンですか!
嬉しいです!
またキュンキュンしていただけたら幸いです(笑)





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