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■リクエスト企画2010■\(^o^)/
とら様【AST】
【ハレルヤとアレルヤの普段は見せない兄弟の絆を見たニールとライルが、それを隣で微笑ましく見守る】






それはランチの忙しさも一段落した頃だった。
「ハレルヤ!電話!」
「はあ?」
「グラハムさんから!」
「え?」
珍しい時間に珍しい人物からの電話。
午後の仕込みをしていた従業員も顔を上げる。
ライルも眉を潜めてハレルヤを見詰めた。



「あ、はい……ハレルヤです、え?」
「……はい、あ、まだ仕事で」
「はい……有り難うございます」



二、三言のみで電話は切られる。
しかし、ハレルヤの表情はどこか浮かなかった。
ライルは声を掛けて良いのか躊躇する。
もし、何か重大なことがあったならハレルヤも仕事をしている場合ではないはずだ。
しかし、ハレルヤは手を洗い直すとまた食材に向き直る。
(大したことじゃ、ないのか?)
溜息を吐いてライルも自分の持ち場へ戻ることにしたが、どうにも落ち着かない。
「グラハムさん、何だって?」
周りがそわそわしているのを見兼ねたマスターが声を掛けると、ハレルヤはポツリと言った。
「なんか、アレルヤが怪我したらしくて」
「えっ!?」
充分重大な事柄に全員が声を上げる。
「出血が酷いみたいで、あっちの店長さんとニールが付き添っているみたいなんですけど」
ライルはグラリと目の前が白くなった。
ニールは今どんな気持ちでいるのだろう。
「じゃあ、ハレルヤも直ぐに」
「いや、まだ仕事があるんで」
マスターの言葉を断ち切るように言ったハレルヤに、ライルはその背中を思いっ切り叩いた。
「バーカ!」
バシン、と店内に音が響く。
「たった一人の肉親だろっ?」
「……ライル」
「行っておいで」
ライルとマスターの言葉にハレルヤはぎゅっとエプロンを握り締めた。


「………っ、すいませんっ!」


バタバタと飛び出していくハレルヤの背中を、ライルはほっとしながら見送る。
強がりは時として残酷な結果を産むこともあるのだ。
本当はライルも駆け出して行きたかったが、溜息をなんとか押し殺す。
「ライル、付き添ってあげて」
「え?」
「ライルも今日は早番でしょ?後は大丈夫だから」
店内の全員が頷いた。
「ニールも待ってるよ」
マスターの言葉が後押しをする。



ライルは深く頭を下げると、ハレルヤの後を追い掛けた。







***




「ニール!」



「!!」
説明された処置室に向かうと、そこにはニールと店長がソファーに座っていた。
ニールはハレルヤとライルを見て、泣きながら走り寄る。
そんなニールをライルは抱き上げると背中をポンポンと優しく叩いた。
「……大丈夫だからな」
コクコクコクコク
ぎゅーっとしがみつく小さい身体は震えていて。
どれだけ泣いたのだろう。
身体は熱くて、湿った感触と涙の匂いがした。
ライルは胸が痛くなる。
「ハレルヤくん」
店長は立ち上がってハレルヤに頭を下げた。
ハレルヤも頭を下げる。
「グラハムさんから連絡貰って……」
「そうか、わざわざ有り難う」
「わざわざって!」
「!!」
その言葉にライルが反応して怒鳴った。
びっくりして腕の中のニールが飛び跳ねたが止まらない。
「当たり前じゃないですかっ!」
ライルの勢いに店長はタジタジと一歩下がる。
「そ、そうですね」
悪かった、と店長は頬を掻いた。
「………っ」
大人達の異様な雰囲気を感じ取って、ニールはぐすぐすと更に愚図る。
ライルは無言でその背中を撫でた。
ハレルヤも黙り込み、廊下にはニールの愚図る音だけが響く。




「あれ?ハレルヤ?」




その時、やけに明るい気の抜ける声が聞こえた。
「ライルも?」
「…………」
「…………」
「………どうしたの?」
何とも言えない空気にアレルヤは首を傾げる。
「!!」
あわあわとニールがジタバタしたので、ライルは我に返った。
「アレルヤ、怪我」
「え?ああ、ちょっと刃がかすっちゃって」
ドジって、と苦笑いする。
それから薄く包帯が巻かれた手をヒラヒラと振った。
「でも、縫わない程度だよ」
十日もすれば綺麗に治るというのが医者の見解だ。
「だって!て、店長自らっ」
ライルに言われて店長も我に返る。
「あ、ああ……実はニールが大変で」
むしろニールの付き添いです、と溜息を吐いた。
「ニール!お待たせ!」
アレルヤはライルからニールを受け取ると優しく抱き締める。
「!!」
ニールはアレルヤの手を心配そうに撫でた。
「大丈夫だよっ」
アレルヤはニールのほっぺをプニプニする。
すると漸くニールもくすぐったそうに笑った。
店長が申し訳なさそうに言う。
「多分グラハムにからかわれたんだな」
「………はあ」
そのいつもの光景にライルが脱力しかけたときだった。




「あ、ハレルヤっ?」




踵を返してズンズンとハレルヤが帰って行くのを、慌ててアレルヤは追おうとする。
しかし、思い出して振り返った。
「あ、て、店長」
「ああ、今日はもう帰っていいぞ」
「有り難うございました!」
鞄を受け取り頭を下げてアレルヤはハレルヤを再度追い掛ける。
「ハレルヤ!」
ニール連れではなかなか追いつけない。
ライルも困惑したように少し間を開けて後を着いていく。
「アレルヤ、鞄……」
持とうか、とライルが言い掛けた時ハレルヤが立ち止まった。
「うわっ」
今度はニールごとぶつかりそうになる。
「………ハレルヤ?」
アレルヤは目をパチクリとした。
「………っ!かせっ!」
くるりと向き直ったハレルヤの顔は……真っ赤だった。
アレルヤのバッグを奪い取るように持ってまた早足で進んでいく。
「あ、ありがと」
「………」
「待ってよ!ハレルヤ!」
アレルヤは笑顔を浮かべてハレルヤの横に並ぶ。
「…………」
仏頂面の弟だけれど、なんだか可愛い。
こうして並んで歩くのも久し振りだ。
(心配……してくれたのかな?)
まだ耳が赤い。
よくよく見たらジャケットの下はコックコートだ。
驚いてライルを振り返ると、通じたのか笑いながら頷いた。
(そうなんだ……)
同じ歩幅で歩くハレルヤに胸が熱くなる。



これは忘れていた感覚だ。
昔からあまり話すことのなかった弟。
話さなくても、全てわかっていた。


あの頃は。



ニヤニヤ笑うライルがニールを引き受けてくれた。
ニールも頬をピンクにしてふにゃふにゃと笑っている。



「おい」
「んー?」
「クソコックに今度フルコース奢れって言っとけ」
「えーっ!」




悪態を吐くその顔はもういつもの無表情で。
アレルヤはクスリと笑うと取り敢えず頷いた。










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とら様>>>
この度は素敵なリクエストを有り難うございました(*´∀`*)
遅くなってしまい申し訳ございませんっ!
とても楽しく書かせていただきました!
ここまでハプ双子を掘り下げたのは初だと思います。
なんだか仲良しだ(笑)
いつもは一定の距離感を意識しているのですが、今回はグッと縮めてみました!
楽しんでいただけたら幸いです<(__*)>






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