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■リクエスト企画2010■\(^o^)/
JG様【AST】1/3
【レストラン合同の旅行】





基本的に同職業は休日も同日になる。
先日、アレルヤの職場とハレルヤ+ライルの職場でこんな話し合いがもたれた。


『合同社員旅行で親睦を深めませんか?』


アレルヤとハレルヤが双子ということもあるが、今やニールという存在のおかげで二店は時には協力し合う関係を築きつつあった。
ということで。
職業柄長期休みは取れないため、一泊二日で『ホテルで宴会+温泉』のみの強行スケジュールではあるが、美味しい料理とお酒そしてニールで日頃の疲れを癒すことにしたのである。





***





旅行当日、早くも事件は起こった。


「…………」
「ニ、ニール」
エクシアを肩に乗せハロを抱き抱えて、ニールはべそべそと涙を浮かべた。
大きな目が真っ赤になって痛々しい。
「ニール……ハロとエクシアは連れていけないんだよ?」
「………」
コクコク
頷くニールの頭を、困ったような顔をしたセツナが優しく撫でる。
「………俺が残って面倒見るから、心配するな」
「……………」
ニールはコクリと頷くとセツナにハロを手渡した。
ハロはニールの手が離れると『きゅう』と短く鳴いた。
「…………」
「エクシア」
にゃあ、と鳴いてエクシアもセツナの肩に飛び乗る。
青い綺麗な目がニールをじっと見つめていた。
「じゃあ、バイバイしようね」
「………っ」
ニールは小さく手を振るが、直ぐにぐすぐすと涙を零す。
「泣くな」
泣きじゃくるニールをハレルヤが抱き上げた。
「お土産買ってきてあげような」
コクコク
ポンポンと背中を叩いてあやすが、中々ニールの気持ちは浮上しない。
どうやらハロとエクシアも旅行に行くと思って楽しみにしていたらしい。
もっと早くに言うべきだったと大人達は後悔した。
これは、楽しく旅行という雰囲気ではないかもしれない。
その時、レンタカーの中から気怠げにライルが言った。
「あーもう連れてっちゃえば?」
「ライル!」
「ハロもエクシアもニールが面倒見れば良いじゃん」
「!!」
コクコク
ライルの言葉にパアッとニールの表情が明るくなる。
「ついでにセツナも子守に連れて行けば?」
「え」
コクコクコクコク
必死に頷くニールとニヤリと笑うライルに、セツナは言葉に詰まった。
「いや、俺は…」
いつも無口で、決して団体行動が得意ではないセツナは唯一『不参加』を希望していた人物だ。
理由は『エクシアを置いていけないから』なのだが、その理由は通用しなさそうな展開だ。
「さっさと乗れよ」
「…………」
「俺だって、『アイツ』と一緒なんて虫酸が走るけど(ニールのために)嫌々仕方なく行ってやるんだからな」
そう言って思いっ切りアリーを指差したライルに、敢えて離れた場所にいたアリーも顔をしかめる。
「………それはこっちのセリフだ」
店長とマスターは顔を見合わせると深い溜息を吐いた。
それはすぐに苦笑へと変わる。
「………仕方ないな」
「!!」
店長はハレルヤに抱かれたままのニールと目線を合わせると言った。
「ニール、ちゃんと面倒見れるか?」
「!!」
コクコクコクコク
「じゃあ、連れてくか!」
「!!」
ニールはハレルヤの腕から店長へと飛び付いた。
「うおっ!」
その足元ではハロが嬉しそうにくるくると回っている。
しかし、エクシアは飼い主であるセツナの肩で大人しくしていた。
「セツナも乗りなさい」
「マスター……、でも」
「実は始めから引っ張ってでも連れてくつもりだったんだ」
「は」
「だから食事も部屋も心配しなくていいよ」
にっこりと微笑まれたセツナはもう反論の言葉は残されていなかった。
「…………はい」



こうして、一泊二日のプチ社員旅行は全員参加で幕を開けた。





***




「着いたよー!」
「……ニール?部屋に着いたぞ?」
バスの中から爆睡だったニールは、今もまだグラハムの腕の中で眠っている。
「姫?」
「…………」
グラハムが声を掛けるともぞもぞと動いたが、まだ眠いらしい。
ふにふにと唇を動かしたが、またグラハムの胸に顔を埋めてしまった。
「おい、ニール!」
「まあまあ、ライルくん」
グラハムはにっこり微笑むとニールの耳元で囁く。
「オヤツがあるよ?」
「!!」
次の瞬間、ニールの目がパッチリ開いた。
キョロキョロとオヤツを探すニールに全員で苦笑いしてしまう。
「ほらよ」
「!!」
部屋に置いてあった菓子をライルに貰って、ニールの目がキラキラ輝いた。
そして、その菓子をグラハムに見せる。
「ああ、食べさせてあげようね」
コクコク
「…………」
まるで蜜月の新婚カップルみたいな二人に、ハレルヤはげんなりとした。
すっかり餌付けされている気がする。
これでシェフとしての腕は最高なのだから詐欺に近い。


「しっかし、この部屋割かよ」


ライルは不機嫌そうに部屋を眺めた。
ニール、アレルヤ、ハレルヤ、ライル、グラハム、アリー。
何やら意図を感じる部屋割にライルの機嫌は下降の一途を辿った。
狭いこの空間で、同じ空気を吸いたくない相手がいる。
それは周知のことだったはずだ。
「はは、」
「仕方ねぇだろ、ニールの取り合いになったんだから」
「??」
深夜酔っ払い達に絡まれても可哀相だ。
ちなみにハロとエクシアはセツナチームにいる。
元々ペット可なホテルのため、もめることなくスムーズにチェックイン出来た。
「飯は全員一緒だからな」
「!!」
コクコク
銘菓を食べながらニールは嬉しそうに頷く。
ニールにとって、大人数での食事は初めてのはずだ。
「楽しみだねっ!」
コクコク
ポロポロ零れた菓子を拭きながらアレルヤが言うと、ニールはふにゃふにゃと笑った。
それだけで殺伐とした空気も和やかになる。
……とアレルヤが思ったのは一瞬だった。
「ほら、茶入ったぞ」
「うわっ、アリーさん!すいませんっ!」
先輩にお茶を入れさせてしまい、アレルヤは慌てる。
しかし、アリーは全くお構い無しのようだ。
「お前はこれ」
ニールはアリーからオレンジジュースを受け取ると、頬をピンクに染めてペコリと頭を下げる。
その頭をアリーはグリグリと撫でた。
ニールはキャッキャッと喜ぶが、ライルはそれが気に食わない。
「ニールに触んなっ!腐れパティシェ!」
「なんだとっ!性悪パティシェ!」
突然始まった言い争いに、ニールは目を丸くした。
この二人の険悪ぶりは、もうニールも慣れている。
それでも、あわあわとライルとアリーを宥めようと必死のニールに、グラハムが手招きをした。
「姫、危ないからこっちにおいで?」
「?」
「こちらのお菓子も開けてあげよう」
「!!」
グラハムは、パタパタと駆けてきたニールを抱き上げて膝へ乗せる。
「苺は好きかい?」
コクコク
「チョコレートは?」
コクコク
「どっちも食べてしまおうか」
コクコクコクコク



「お前のレストラン、変態とヘタレとロリコンばっかだろっ!」
「お前のところもドSと腹黒とロリコンばかりだろうがっ!」




「……………」




はたして【親睦会】になっているのか。
アレルヤとハレルヤは溜息を吐いた。














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ASTでは区別をつけるために『店長(アレルヤ職場)』『マスター(ハレライ職場)』にしてあります。
実際は二人とも『オーナー』です。



1/2と書きましたが、1/3になりそうなスローペースです;
夕飯・お風呂・就寝は書きたいのですが(汗)





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