■リクエスト企画2010■\(^o^)/ 匿名様【AST】 【ケンカ中なハレライをお菓子(ライル作?)で取り持とうとするニール】 ニールはライルと手を繋ぎながらアパートへと戻ってきた。 さっきまでライルのマンションでクッキーを作っていたのだ。 くまのポシェットから薫る甘いバニラビーンズの匂いに、ニールはふにゃふにゃと笑った。 「アレルヤ、喜ぶぞ」 コクコク 「お前も大分上手くなったな」 ライルの褒め言葉にテレテレとニールは頬を赤く染める。 その頬を優しく撫でて、ライルはアパートのドアを開けた。 「ただい……ま」 ニールは部屋に漂う甘い香りに首を傾げる。 その香りは自分のポシェットから漂うものとは少しだけ違っていた。 そわそわとニールは手を引いているライルを見る。 「…………」 そのライルは、リビングに入ったとたん固まった。 「よう」 そこにはソファーで料理の専門書を読んでいるハレルヤがいた。 そこまでは予定通りだ。 「どうした」 「?」 黙り込んでしまったライルに、ニールも首を傾げる。 軽く目線だけ寄越したハレルヤの手元にはクッキー、しかもハンドメイド系が握られていた。 一瞬でわかってしまうのは職業柄か。 パキン、と更に空気が冷えた。 「………」 ニールはあわあわとライルとハレルヤを交互に見る。 「それ……」 「あ?」 ライルが指差したものを見て、ハレルヤは少しだけ眉を顰めて言った。 「ああ、貰ったんだよ」 「はあっ?」 誰にだよ、と聞く前にクッキーを持っている手が怒りで震える。 どうせ店にくるハレルヤ目当ての女の中の一人なのだろう。 (甘い物が苦手だって言うから毎回毎回気を使って丁寧に手作りしてるのにしかも美味いとか言われたことすらないのに健気に作ってる俺って可愛いよな可愛いくらいたまには言え) 見るからに不機嫌になったライルにハレルヤも漸く顔を上げる。 「ちょっと待て、お前勘違い」 「もういい」 短く言って踵を返すライルの腕をハレルヤが掴んだ。 「離せよっ」 「話聞けよ」 睨み合う二人の足元でニールはオロオロと見守るしかない。 「短気すぎんだよ…」 溜息混じりに言ったハレルヤにライルはカッとなる。 しかし、ここで言い返すと『短気』と認めているようなものだ。 ライルは、ふっと笑うと冷静を装って言った。 「………相変わらず八方美人」 「ああっ?誰がだよ!」 「お前がだよっ!」 いよいよ激しくなってきた言い合いに、ニールは辺りを見回した。 そしてライルのクッキーを掴むと、ぐいぐいとハレルヤに押し付ける。 「ああ?」 それはライルがハレルヤのために焼いた、甘さ控え目のものだった。 「ニール!ハレルヤはもうクッキーいらないんだって!」 「そんなこと言ってねぇだろ」 綺麗にラッピングされたクッキーが床に落ちた。 ニールは慌ててそれを拾う。 大好きな二人が喧嘩をしている事実に、ニールは不安になった。 怖くて怖くて。 「………っ」 ボロボロと零れ落ちた涙にライルとハレルヤはぎょっとする。 ニールはぎゅーっとライルとハレルヤの服を握り締めて大粒の涙を零した。 声は聞こえないが、正に『わんわん』泣いているのがわかる。 流石にライルとハレルヤは気まずそうに視線を合わせた。 「ニール…」 「泣くなよ…」 ライルはニールを抱き上げると背中をポンポンと優しく叩いてあやす。 熱くなっていた頭が急速に冷えていった。 ぐすぐすと泣くニールに胸が痛くなる。 ハレルヤとの喧嘩はわりと珍しいことではない。 しかし、ニールの前ですることではなかった。 大人げなかった、と反省する。 「…………」 ハレルヤはニールの手から袋を受け取った。 ライルももう何も言わずにニールの背中を撫で続ける。 ハレルヤが袋を開けると、いつもの食べ慣れたクッキーが出てきた。 チーズの塩味が効いているライルのオリジナルだ。 一口食べるとほろほろと口の中で崩れた。 「………美味い」 「当たり前だろ」 愛情籠ってるんだから、とライルは笑った。 *** 誤解はアレルヤが帰宅して直ぐに解けた。 「ごめんね!それ、僕が貰ってきたものなんだ!」 「はあっ?」 「アリーさんに……感想聞かせてほしいって言われたから、ハレルヤにも食べてもらって」 恐る恐るアレルヤが言うと、ライルは一気に爆発した。 「よりによってあいつかよっ!!」 「ごっ、ごめんなさいっ!」 「アレルヤ!おっまえなあっ!」 「………ニールがビックリしてるぞ」 その言葉にライルは言葉に詰まる。 目を丸くしているニールに、仕方なく溜飲を下げた。 「あ、ほら!ライルはアリーさん嫌ってるから、ハレルヤも言わなかったんだよ」 「…………」 ライルがハレルヤを見ると僅かに耳が赤い。 ライルは自然に自分の頬が緩むのがわかった。 「………美味かった?あいつのクッキー」 「まあな」 「…………ふーん」 「俺はお前のやつのほうが好きだけど」 「!!」 ぱあっと笑顔になって、ライルはハレルヤに抱き着いた。 「離れろ」 そう言いながらも無理に剥そうとしないハレルヤにライルは甘える。 (だから、嫌いになれないんだよな) 本人に自覚はないが、優柔不断で八方美人で。 ヤキモチ焼いても焼き足りないくらいだけど。 「ハレルヤ……」 「………」 無言で頭をポンポンとされて、ライルは幸せな気持ちでいっぱいになった。 「はは、はー……仲直り出来て良かったね」 コクコク 「ニールも食べる?アリーさんのクッキー美味しいよ」 ぶんぶん ニールは、アリーのクッキーを食べているアレルヤをじーっと見詰めた。 それにライルが気付いて、ニールの頭を撫でる。 「ニールもアレルヤにクッキー作ったんだよな」 コクコク 「そうなんだ!ありがとうっ!」 ニールはガサガサとポシェットからラッピングされたクッキーを取り出した。 「うわー!美味しそうだねっ!」 「………」 「ニール?」 ニールは少し考えてから、手に持っていたクッキーをハレルヤに渡す。 「………ニール?」 ハレルヤは驚きながらも反射的に受け取ってしまった。 「えええっ!?」 アレルヤは思い切りショックを受ける。 「な、なんでっ?」 「チビなりにヤキモチ焼いてんだよ」 ライルがニヤニヤ笑った。 「ざまーみろ」 「えええっ!!?」 「…………」 「アリーさんのクッキーは別に僕だけにっていうんじゃないんだよ!ニールのクッキーのほうが気持ちが籠ってるし貰って嬉しいし絶対に美味しいからっ!」 「………」 「ニールー!」 「お、今度はお前らが揉めるのか?」 「ライルっ!!」 ぷっくりと膨れたニールがアレルヤにクッキーをあげたのは、それから大分経ってからのことだった。 ---------- 匿名様>>> この度は素敵なリクエストを有り難うございました(*´∀`*) 取持つというか…泣き落としになってしまいました(汗) ニールの涙は最強だと思いますっ!← これからも頑張りますので、宜しくお願い致します<(__*)> [*前へ][次へ#] [戻る] |