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■リクエスト企画2010■\(^o^)/
ヒロビロ様【AST】
【ニールとハロの小さな大冒険】





ニール、『四つ葉のクローバー』って知ってるか?


知るわけねぇよな。


クローバーには葉っぱが四つのものがあって、それぞれ希望・誠実・愛情・幸運を象徴して……とにかく。






幸せになれる『魔法の葉っぱ』なんだぜ。







***




「なんだこれ?」
アリーはキッズルームにあるスケッチブックを見て眉をしかめた。
白い紙の真ん中にはグルグルと緑色のクレヨンが踊っている。
「………アメーバー、じゃねぇよな」
ニールはわりと色彩感覚が有る。
だから、緑色には意味があるはずだ。
「レタス?いや、キャベツか?」
どうしても食べ物を浮かべてしまう自分にアリーは苦笑した。
形も丸のような四角のような、ぼんやりとした形をしている。
「………ん?」
アリーは暫く考えていたが、ふと机の上に置かれた一冊の絵本に気付いた。
それは今日、ニールが大切そうに胸に抱いてきた絵本だった。
(ああ、性悪パティシェに貰ったんだっけな)
パラパラとページをめくると、アリーは思わず表情を緩ませる。
(これか)
スケッチブックの緑色の正体は絵本に隠されていた。









その時、休憩室では大事件が起きていた。


「たっ、大変ですっ!」
「鍋でも焦がしたか?」
慌てているアレルヤに店長はクールに応える。
しかし、その冷静さも一瞬だった。
「ニールがいないんですっ!」
「なにーっ!?」
店長の声に従業員がわらわらと集まる。
「いないって!」
「どういうことだっ?」
アレルヤは泣きそうな表情で説明した。
「そ、それが…さっきまではハロと遊んでいたんです」
ほんの数分前は確かにハロと遊んでいたのを確認している。
ニールは大概キッズルームにいるか、裏庭でハロと遊んでいるのだ。
基本的に人見知りなニールは勝手に何処かへ行ってしまったりしないので、アレルヤも安心して仕事をしていたのだが。
「ハロは?」
「ハロもいないんですっ!」
飼い主である店長は額に手を当てて溜息を吐いた。
いちお、ハロはニールのお目付役なのだ。
「ハロまで……何やってんだ」



とにかく探すぞ、と店長は真っ青な顔でパニックになっているアレルヤの頭をはたくと外へ向かった。









***





広いクローバー畑でニールは黙々と四つ葉を探していた。
夕べのライルの言葉を何度も頭の中で復唱する。
しかし、ライルは肝心なことを言い忘れていたのだ。



四つ葉のクローバーは非常に珍しいということを。



ザワリと、風にクローバーが揺れた。
足元に広がる大量のクローバーを何度探しても、四つ葉のものは見つからない。
「…………」
ニールの瞳がうるうると潤んだ。
目の前の白くて可愛い花が涙で滲む。
「………」
四つ葉のクローバーがなくてもニールは幸せだった。
でも、きっと見つけたら皆が喜んでくれる。
幸せそうに笑ってくれる。
『魔法の葉っぱ』なのだ。
ニールは幼いながらも本能的に感じていた。
だから、見付けたい。
なのに、見付からない。
「………っ」
悲しくて、ついに涙が零れ落ちた。
クローバーの緑が濡れて鮮やかに光る。
ポロポロと涙が伝う頬をハロがペロペロと舐めた。
「きゅー…」
「………」
心配そうに鳴くハロにニールは目をパチパチさせる。
そして、安心させるようにハロの頭を撫でると涙を拭って笑った。
泣いている場合ではない。


ニールは、再び一生懸命四つ葉のクローバーを探し始めた。






***





「ニール!いたーっ!」


どれほど夢中になってクローバーを探していただろうか。
微かに聞こえた声に、ニールは立ち上がって辺りを見回す。
「ニー…ル!」
「?」
その時、バタバタとアレルヤと店長が走ってくるのが見えた。
あまりの勢いに、ニールは目を丸くする。
「良かったっ!」
アレルヤはゼーゼーと息を切らしながらニールを抱き締めた。
「こ、こんな近くにいたなんて」
実はニールとハロがいるクローバー畑は、店の裏手の敷地内だった。
建物で死角になっていた上に、ニールはしゃがみ込んで俯いていたため、中々視界に入らなかったのだ。
「四つ葉のクローバー探してたの?」
コクリ
頷くニールにアレルヤは内心でほっと息を吐く。
一度戻った店で、アリーがイラストのことを教えてくれた。
それをヒントにここを探し当てたのだ。
(そういえば、夕べ絵本を見ながら目を輝かせてたー!!)
今更思い出す。
これでは怒るに怒れない。
「ハロ……」
「きゃんきゃん!」
御機嫌で纏わりつく愛犬に、店長もガックリと肩を落とした。
少なくともニールを探していた声は、聴覚の良いハロには聞こえていたはずなのだが。
「……聞こえたら返事してくれよ」
「きゅ?」
「はあ……」
どうやらニールに似てハロも性格がのんびりしているらしい。
首を傾げて、尻尾をぶんぶん振って甘えるだけだ。
仕方ないな、と店長は微笑した。



「しっかし、お前も汚れたなあ………ん?」
店長はハロの頭にくっついていたクローバーを指で摘む。
そして目を見張った。
「これっ!四つ葉だっ!」
「ええーっ!」
「………っ!」
ニールとアレルヤも興奮して店長の手元を見る。
「!!」
それは確かに四つ葉のクローバーだった。
ようやく見ることの出来たそれに、ニールは釘付けになる。
まるで奇跡のように、絵本で見た四つ葉のクローバーが目の前にある。
「可愛いねっ」
コクコクコクコク
ニールは感動して、不思議そうな顔をしているハロの頭を何度も撫でた。
「ほら、ニール」
ぶんぶん
「ハロにあげるの?」
コクコクコクコク
「じゃあ、押し葉にするか」
「?」
ハロと同じ方向に首を傾げたニールに、店長が笑いながら説明する。
「大切に飾ろうな」
コクコク




それから暫く三人で四つ葉を探してみたが、やはり簡単には見付からなかった。
「はい!ニール!」
「!!」
その代わりに、アレルヤはシロツメクサでニールに花冠を作ってあげた。
久し振りに作った花冠は少し歪んでいたけれど、真っ白で綺麗にニールの頭上で揺れている。
「魔法みたいでしょ?」
コクコクコクコク
ニールは頬を真っ赤に染めてアレルヤに抱き着いた。
その幸せそうな表情にアレルヤも満面の笑みを浮かべる。
「アリーさんがオヤツを用意して待ってるよ」
「!!」
「帰ろうか」
コクコク
ニールはアレルヤの手をぎゅっと握るとスッキリした顔で頷いた。








手をしっかり洗ってから休憩室へ戻ると、アリーがタイミングをはかってニールのオヤツをテーブルへと置いた。
「ほら」
「!!」
ニールは目の前に置かれたケーキに、ぽかーんと口を開ける。
そこには確かに四つ葉のクローバーがあった。
抹茶色のチョコレートでコーティングされているケーキには、シロツメクサのマジパンがチョコンと乗っている。
皿にはオレンジソースがハートの模様を描いていた。
「うわっ!可愛いですねっ!」
「ハート型の抹茶ケーキを四つ、くっつけた」
「!!」
ニールはあわあわとアリーを見てから、ケーキを指差す。
「気に入ったか?」
コクコク
「味も美味いからな、食え」
コクコクコクコク
ニールは暫く眺めていたが、勢い良くガブリと食いついた。
「犬食いするなっ!手を使え!」
「?」
はぐはぐと食べているニールにアリーがフォークを渡しているのを見ながら、アレルヤはニールの髪を撫でる。
すると、爽やかな草原の薫りがした。
「今度、ハレルヤとライルと四人で四つ葉のクローバー探しに行こうか」
「!!」
コクコクコクコク
ニールは嬉しそうにふにゃふにゃと笑った。
ニールの笑顔につられて皆笑顔になる。



(幸せだな……)



あの日、ニールと出会ったときから。
自分の四つ葉のクローバーはここにある。




アレルヤはそんなことを思いながら、甘えてくるニールをぎゅっと抱き締めた。









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ヒロビロ様>>>
いつもコメントや励ましのお言葉を有り難うございます!
とても励みになり、ヒロビロ様のおかげでなんとか頑張ってこれております(*´∀`*)
この度は素敵なリクエストを有り難うございました!
「小さな大冒険」というリクエストだったのですが……規模が小さ過ぎました(汗)
す、すいません;
恩を仇で…とは正にこのことっΣ( ̄□ ̄;)
そしてハロは横でふんふんとクローバーを掘って手伝っていたことと思います(笑)
だめだめな管理人ですが、これからも宜しくお願い致します<(__*)>







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