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■リクエスト企画2010■\(^o^)/
アイ様【AST】
【水族館or動物園に行く話】
※水族館にさせていただきました










「……………」




待ち合わせ場所は大きい鯨のオブジェの前。
先に来ていたハレルヤとライルは、アレルヤの足にしがみつくニールを見て無言になった。




***



『これ、貰ったから行ってこい』


そう言って店長から渡されたのは水族館の無料チケットだった。
四人までタダになるらしい。
アレルヤはハレルヤとライルを誘って、三人のオフの日にニールを連れて行くことにした。
平日なら空いているだろうから、人見知りするニールにも安心だ。



「お待たせ!」



アレルヤはニールを足にくっつけたまま、ハレルヤとライルに手を振る。
「……おう」
「あーうん」
そんなアレルヤにハレルヤとライルは曖昧な返事を返すしかない。
「………ニール?」
「どうした?」
声を掛けると、アレルヤの後ろに隠れていたニールがチラリと顔を覗かせた。
「あ?」
視線が合うとあわあわと隠れて……またチラリと覗く。
そして再び視線が合うと、今度はふにゃふにゃと笑ってもじもじし始める。
「なにあれ」
「ははっ」
ライルがニールを指差しながらアレルヤを見ると、アレルヤは笑った。
「楽しみで堪らないみたい」
「はあ?」
「嬉しくてそわそわしてるんだよ」
「わかりにくっ!」
前科(プールやスキー場)があるから、また嫌なのかと思ってしまった。
ハレルヤは苦笑いすると、ニールの頭をグリグリと撫でる。
ニールは気持ち良さげに目を細めた。
「よし、行くか」
「!!」
コクコク


アレルヤは入り口で無料チケットを見せる。
その間、ライルとニールは壁に描かれた魚の絵に盛り上がっていた。
「中には本物の魚がたくさんいるぞ」
コクコク
「魚以外もいるからな」
コクコク
「食べ放題だぞ」
コクコクコクコク
「「ライル!」」
微笑ましく背後の会話を聞いていたアレルヤとハレルヤは慌てて振り返る。
ライルはニヤニヤ笑いながらヒラヒラ手を振った。
「可愛い冗談だろ?」
「ニールが本気にするでしょっ!」
「?」
ハレルヤはしゃがみ込むとよくニールに言い聞かせる。
「今日は見るだけだからな?」
コクコク
「食べられないんだぞ」
「??」
コクコク
早くもライルのせいで一抹の不安にかられた。
(ニールが魚を手掴みしたらどうしてくれる)
水族館の魚に触れることなど出来ないのだが。
出来るわけがないことまで心配になりながら、アレルヤはニールと手を繋いで溜息混じりに中へと足を進めた。






***



水族館の中は薄暗くひんやりとしていた。
いつもと違う雰囲気にニールがハレルヤの後ろに隠れる。
ハレルヤはニールを抱き上げると背中をポンポンと優しく叩いた。
「ほら、デカい水槽が見えるぞ」
始めのコーナーを曲がると、目の前には天井まで伸びた大きい水槽があった。
そこでは色とりどりの魚が思い思いに泳いでいる。
青い水槽に魚達が煌めいて、ニールの目にキラキラと反射した。
「………っ!!」
ぽかーんとニールが口を開けて水槽を見上げる。
頬が昂揚していて、保護者三人は思わず笑ってしまった。
「美味しそうとか思ってんじゃねぇの?」
「そうかもね」
ハレルヤはニールをそっと床に降ろす。
すると恐る恐るニールは水槽に近付いた。
初めての水族館でニールは何を感じているのだろう。
アレルヤはぼんやりとそんなことを考えた。
自分が初めて水族館に行った時の記憶は何故か消えている。
一緒にハレルヤがいたのかも覚えていない。
(初めての記憶って、結構曖昧だよね)
少しだけ残念だ。
今度ハレルヤに聞いてみようと思う。
「ん?」
ぼんやりしているとニールがアレルヤの手を引っ張った。
「どうしたの?」
ニールはさっきまで真剣に見ていた水槽の底を指差す。
そこには亀がいた。
「あ、亀だね」
コクコク
「可愛いね!」
コクコクコクコク
あまり動かない亀を、ニールは飽きずにじーっと見つめている。
気のせいか、亀の方もニールを見ているようだ。
「………亀と見つめ合ってるぞ」
「うーん」
上を見上げれば魚達がスイスイ泳いでいるのに。
もしかしたら小さいニールからは見えないのかもしれない。
「あ、ニール!鮫だよ!」
「?」
そのとき大きな鮫が悠々と水槽を泳いでいった。
アレルヤも興奮してしまって、ニールを抱き上げて鮫を指差す。
「!!」
ニールは『ふわ〜っ!』と鮫を見上げた。
そしてライルを振り返ると鮫を指差す。
「え?食べれるかって?」
コクコク
「食べれねぇよ」
「…………」
すると残念そうにニールが鮫を見た。
アレルヤとハレルヤは苦笑いする。
「フカヒレは高いしなあ」
「アレルヤ、薄給だからな」
「………」
返す言葉もなくアレルヤはガックリと肩を落とした。
ニールは首を傾げるとアレルヤの肩をポンポンと叩いて慰める。






ヒトデを見て泣きそうになったりクラゲを見て食べたそうにしたり、ぐるりと一周まわった時にはニールも保護者達も大満足だった。
暗いコーナーから出ると、最後はお土産コーナーだった。
色んな魚や、イルカ、ペンギンなどのぬいぐるみが並んでいる。
その他にもグッズがところ狭くたくさん並んでいた。
「ニール、欲しいのある?」
ぶんぶん
ニールは首を横に振った。
こういう時、ニールが何かをねだることは殆どない。
「水族館楽しかった?」
コクコク
「楽しかったらお土産買わないとね」
アレルヤの言葉にニールはキョトンとしてから、ゆっくりと頷いた。
「どれが良い?」
「………」
おずおずとニールが指差したのは、イルカやペンギンの形をしたクッキーだった。
ライルが笑う。
「色気ねぇな」
「この年で色気があってどうする」
「お家用とお土産用に買っていこうか」
コクリ
ふにゃりと嬉しそうに頬を赤く染めて笑った。
「でもやっぱり形に残るものも欲しいよね」
「かと言って、これ以上ぬいぐるみ増やしてもな」
「じゃあ、これ買ってやるよ!」
「!!」
ライルはイルカの形をしたシルバーのキーホルダーをニールに見せた。
「!!」
ニールが手に取ると、チリンと小さな鈴が鳴る。
「皆とお揃い、な」
ライルが四つ手の平に並べると、ニールの目がキラキラと輝いた。
(今まで四人で同じ物を持つことはなかったなあ……)
少し気恥ずかしいけれど、アレルヤは胸が甘く温かくなるのがわかった。
「………っ」
「おっと」
ニールはライルに飛び付くとギューッとしがみつく。
「嬉しい時は?」
ライルがニールを抱き上げると、ニールはライルの頬に『ちゅ』とキスをした。
それを見て双子はギョッとする。
「おま…えっ!何仕込んでんだっ!」
「ライルッ!」
知らない間に教えていたらしい。
グラグラと眩暈がする。
「まあまあ」
「まあまあ、じゃねぇっ!」
ぎゃあぎゃあ言い合うハレルヤとライルの間で、ニールは不思議そうに首を傾げた。








「あ……イルカショーお休みなんだ」


出口に貼られたポスターを何気に目にしたアレルヤは呟いた。
イルカショー自体今の今まで知らなかったのだが、せっかく来たのだからニールに見せてあげたかった。
下調べをしなかったのが裏目に出る。
「また来れば良いだろ?」
「え?」
「これが最後じゃあるまいし」
ハレルヤは先を歩いているニールとライルを見つめながら言った。
その顔は優しく、柔らかく微笑んでいる。
「そうだね」
まだまだ時間はたっぷりある。
水族館だけではない。
動物園だって遊園地だって、他にも行きたいとこらたくさんあるのだ。



「また来ようね!ニール!」



そう言ってアレルヤが両手を振ると、ニールは満面の笑みで大きく頷いた。













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アイ様>>>
この度は素敵なリクエストを有り難うございました(*´∀`*)
夏霧的に動物園の記憶が曖昧なため水族館にさせていただきました!





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