クリスマスのひみつ【ちび】
今年こそサンタさんの正体を見抜くんだ、と言い張っていた啓介がことりと首を落としたのを見て、涼介はクスリと笑った。
「さ、いつまでも寝ない悪い子のところには、サンタさん来てくれないぞ。」
やだぁ、と言いたいのだろう、啓介の口元がもごもごと動くが、重力に逆らいきれないまぶたが、形の良いアーモンドアイをすっかり覆ってしまっている。
ベッドの上に座り込んでいた啓介を布団の中に押し込んで、枕もとの電気スタンドを消してやると、数分もたたないうちに静かな寝息が聞こえてきた。
「お休み、啓介。」
広いおでこにお休みのキス。
すると、啓介のくちびるがもごもごと動いた。おやすみ、にーちゃ。
ぽんぽんっと布団の上から胸元をたたいてやってから、涼介はそっと啓介の部屋を後にする。音を立てないようにドアを開けると、待ち構えていた母親がどう?とばかりにこちらを覗き込んでいた。
「寝たよ。」
「本当?助かったわ、涼ちゃん。」
そして、母親は後ろ手に持っていたカラフルな包みの二つのうち一つを涼介に手渡した。
「どうせだから、涼ちゃんがあげてきて頂戴。」
いたずらっぽく片目をつぶった母親に促されて、涼介は足音をしのばせて啓介の枕元へと舞い戻る。
「メリークリスマス、啓介。」
音を立てないように、そぅっと、そぅっと。枕元に包みを置いた。
「はい、サンタさんにもプレゼント。」
音をたてないように啓介の部屋のドアを閉めると、まだそこにいた母親が残っていた包みを涼介に差し出した。
「・・・ありがとう。」
なんだかな、と思いながら苦笑とともに受け取ると、母親はにっこりと笑って隣の部屋の扉を指差す。
「さ、涼ちゃんももう寝なさい。」
「はい。おやすみ、お母さん。」
「おやすみ、涼ちゃん。」
「にーちゃ!サンタさん来た!」
目が覚めて一番最初に枕元を確認したのだろう、啓介はパジャマのまま、大きな包みを抱えてリビングへと下りてきた。
「よかったね、啓介。」
ぱたぱたと涼介の元へ走り寄ってきた啓介のやわらかい髪をなでてやっていると、不意に啓介がこちらを見上げてにっこりと笑った。
「あのね、けいね、サンタさんの正体わかった!」
「・・・誰だったの?」
「にーちゃ!」
・・・見られてた、かな?
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