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マメにまつわる2、3のできごと【ちび】

 「おにわーそと、ふくわーうち!」
 パラパラと豆をまく音は洋風なぼくらのうちにはちょっとにあわないかなぁ、なんて思わないではないけれど、楽しそうにお庭に向かって豆を投げ付けている啓介のすがたを見ていると、そんなことはどうでもいいかな、なんて。
 お仕事で忙しいお父さんとお母さんは居ないけれど、お手伝いさんが夕ごはんの材料といっしょに豆を買ってきて、ごはんの前に「ます」に入れて出してくれた。
 鬼役はいないけど、啓介と二人だけのせつぶんだ。
 「鬼はー外」
 「ふくわーうち!」
 何が楽しいのか、やたらニコニコとしている啓介と目が合って、ぼくも思わず笑ってしまった。
 福は内。


 「じゃあ、お豆を頂きましょうね。」
 ごはんの後、そう言ってお手伝いさんがのこっていた豆を持ってきてくれた。
 「涼介坊ちゃまには八つですね。」
 わたされた八この豆を手の平に乗せる。その豆を見た啓介は、目をかがやかせて手を差し出した。
 「ハイハイ、啓介坊ちゃまには・・・六つ、と。」
 お手伝いさんが差し出した六この豆をうけとって、しかし啓介はふきげんそうにぼくの手を見つめる。
 「・・・にーちゃのがおーい!!」
 「ええ、涼介坊ちゃまは数えで八歳、啓介坊ちゃまは六歳ですからね。」
 年の数だけ食べるんだよと言ってはみるが、啓介はなっとくしない。
 「にーちゃ、ずるいー!!」
 去年まではこんなことなかったのに、どうやらきちんと数が数えられるようになったみたいだ。
 おもわぬ啓介のせいちょうがなんだかうれしくて、ぼくはちょっと笑ってしまった。けど、それが気に入らなかったらしく啓介はよけいにほっぺたをふくらませてしまう。
 「しかたないな・・・じゃあほら、いっこあげるよ。」
 そう言ってぼくは手の平に乗った豆をひとつ、啓介の手にのせてあげる。
 「ほら、これでぼくのもななつ、啓介のも、ななつ。」
 いちにい、と自分とぼくの手の中の豆を数えて、啓介はまんぞくしたようにニッコリ笑った。
 「にーちゃとおなじ!」






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