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クリスマスの一幕




 イタリア語のカードが添えられた包みが届いた。
 カードには多分、クリスマスおめでとう、とでも書いてあるのだろう。
 その下に、署名がわりに走っているTi amoの意味はもう覚えてしまったけど。
 今年は航空券ではないようだ。年始にはこちらに来ると言っていたし。
 やれやれ、というように溜め息をひとつ。
 だけど、包みをほどく指先は丁寧で、素早い。
 深い、落ち着いた色の赤。同系色でストライプの印刷がされていて、店のロゴと思しかマークがエンボスしてある。
 リボンは淡い色のゴールド。しゅる、と音をたててなめらかにほどけていく。
 包装紙を丁寧に剥がすと、手のひらにのるくらいの、象牙色をした紙の箱が姿を現した。
 しっかりとした作りだ。一見するとどこから開けたら良いのか解らないほどに、精密に擦り合わせてある。
 実際、少し悩んでから上蓋を持ち上げた。
 しゅう、と空気が流れる音がしてそれが持ち上がる。
 中身は、時計だった。
 ベルトから文字盤まで、深みの有る黒。12時の所にだけ石が嵌め込まれていて、また小さく空いた窓から日付と思われる数字が顔を出している。針だけがくっきりと白い。
 派手好みの彼にしては、珍しいチョイスだ。
 手に取ると、充分な存在感のある重量。
 何度か、重さを確かめるように手のひらにのせて上下させてみる。
 それから、左の手首に巻き付ける。
 ベルトは、遠目には分からなかったが金属製だ。細い糸のような金属で編まれているので、一般的な金属のベルトのようにカチャカチャとはならない。しなやかに、手首にフィットする。
 パチン、と金具を留めると、しっくりと腕に馴染んだ。
 それだけで手に取ったときには少し重たく感じられたが、着けてみるとそれほどでもない。着けていることを忘れない程度に重く、着けていて疲れない程度に軽い。
 ふん、と雲雀は口元に笑みを浮かべた。
 珍しく、気に召したようだ。
 携帯を手にすると、時計の送り主に宛ててコールする。

「ああ、ディーノ? うん、時計届いたよ。あなたにしては悪くない選択だね。……そう。二日と三日は、空けてあげるよ。じゃあね」

 電話の向こうでは、揃いの時計を嵌めたイタリア男が嬉しそうに、何度も何度も頷いていた。








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ぶおんなたーれ!ネタをやるのももう三度目ですか。復活も長く続いてるもんですね、私のなかで。
折角のクリスマスなんで、少しはなにかしたいよね、ってことで。ほとんど時計の描写じゃねーか!って突っ込まないで!






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あきゅろす。
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