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熱帯夜




 あつい、とうわごとの様に言って、雲雀は掛布団を足で跳ね上げた。

 暦の上ではもう夏、しかし梅雨明けの声はまだ聞こえず、夜はまだまだ冷えるからと冬用の布団は仕舞えずにいて。
 毎日布団を上げ下ろしするならば、その日の気温に応じて出す布団も変えられようが、典型的な日本家屋を地で行くこの家で、しかし雲雀の部屋だけは後から床を張り替えた洋室、しかも布団を仕舞っているのは階下の物置と来た日には、突然の熱帯夜だからと布団を入れ替えるのも面倒くさい。
 几帳面だかものぐさでもある雲雀は、快適な睡眠より楽を取った。

 その結果が現状である。

 恭弥ぁ、と甘ったるい寝言を漏らす肉布団はとっくに床へと蹴落としたのだが、それでも籠った熱はなかなか逃げて行かない。

 何でこの人はこんなにぐーすか寝られるの、と苛立ち混じりにベッドからはみ出した足でディーノを蹴りつける。
 すると、その拍子に足が床に触れた。
 ひやりとした感触に得も言われぬ心地よさを感じ、熱帯夜に火照った体はもっと、と貪欲に冷気を求める。

 結果、雲雀の身体は徐々にベッドからずり落ち、最終的には床にぺたりと頬をつけた。
 成る程これならディーノのように熟睡できるかも、と雲雀は目を閉じた。








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拍手お礼だったもの。
これまた一年以上お礼に居座っていたとか……言わないんだから……
去年の暑い夜に書きました。はい。






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