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その、はずだった。



「先輩待って」

鋭い声に呼び止められて、思わず足を止め後ろを振り向く。
そこにはさっきまでのヘラヘラ笑いとは違い、真剣な顔をした赤坂がいた。
そうして立ち上がって完全に下着とスラックスを脱ぎ捨てると、こちらに向かって静かに歩いてくる。
その姿に一気にここから立ち去りたい衝動に駆られたが、体が動かなかった。
その間にも赤坂と俺との距離が縮まる。

「……!」

と、完全に距離を詰めてきた赤坂から、首に腕を回されぐいと引き寄せられた。

「赤…坂、」

止めようと、どうにか声を絞り出す。
しかし掠れた声にはそんな力、少しだってない。

「先輩、俺、先輩に超中途半端なところでとめられて、困ってるんですよね」

はぁ、と耳に熱い息を吹き掛けるように、耳元で吐息混じりに赤坂が訴える。

「もう限界なんですよね。責任…」

とってくれます?と赤坂が笑った音がして、手を捕まれた。
そうして、それを既に勃ちあがり雫をうかばせている奴の自身へと誘導する。
それなのに、俺の体は動かない。

「……っ」

そうして触れる、奴のもの。
指先が触れただけでも熱くて脈うっているのが伝わってくる。
その感触に漸く体が動いて、俺は渾身の力で赤坂を突き飛ばして資料室からでた。
そのまま怖いものから逃げるようにさっきまで作業をしていた部屋に戻り、ドアを閉めてその前に座り込む。
息が、荒い。
今何がおこったのか、ここは本当に通い慣れたオフィスなのか、兎に角混乱していた。

「…………」

窓の外は既に街灯も消え、星だけが瞬いている。
目の前の仕事の書類の山が、俺に現実を教えてくれていた。

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