連載小説 ▼深夜の来客 基本的にコンビニは24時間営業だ。 それは俺がバイトしてるLamentoも例外ではない。 当然深夜もやっている。 昼間とは違い、この時間帯はちょっと変わった客が多い。 来客その1 『ヤクザっぽいオッサン』 年齢は30半ばを過ぎた位のオッサンだ。 目付きの鋭い強面といい、左手の手袋といい、どう見てもカタギには見えない。 ちょっと…コワい…。 レジをする時はいつも緊張する。 しかし、醤油だの牛乳だのホットケーキミックスだのと、いつも買っていくものがすごく家庭的なのは何故なんだろう。 来客その2 『謎のライダー』 全身黒ずくめのライダー(いつもバイクで来る) 年齢は20代前半と言ったところか。 もう7月だというのにまだ黒いレザーの服を着ていて、いつも一人で来る(友達いないのか?) こいつからは時々変な視線を感じる。 ライは『優秀な闘牙だな』なんて言っていたが、俺は変質者か何かではないかと思っている。 来客その3 『悪ガキ』 最初見た時あんまり可愛いから女だと思って『帰り道は気を付けろよ』って言ったんだけど、どうも男だという。 人懐こくてよく話をするのだが、アサトをからかうのはやめて欲しい。 例の謎のライダーが来店する前後によく見かける気がするのだが、気のせいだろうか。 来客その4 『カップル』 「アキラ、抹茶味のピノと塩バニラ味のピノ、どっちにする?」 「別に。どっちでも」 「え、そんな投げやりな…」 「じゃあ両方」 「俺の分はッ!?」 「冗談だ。…ふたり居るんだから半分ずつにすればいいだろ…」 「あ、うん…」 早く寝床へ帰れ。 来客その5 『ギターさん』 「こんばんは」 客足が途絶えて退屈だったため、つい船を漕ぎ始めた頃、声をかけられた。 俺は弾かれたように顔を上げた。 「ギターさん!こ、こんばんは」 レジ前には長い赤髪に翠の瞳をした猫、通称ギターさんが居た。(いつもギターを持ち歩いているからそう読んでいる) 「今日も明け方までバイトなのかな?少し疲れているみたいだけど…」 「ああ…。でも大丈夫。ありがとう」 心配してくれたのだ。 このひとは優しい。 俺は会計を済ませた商品を袋に詰め込みながら笑って見せた。 「そう…?」 ギターさんは少し首を傾げると、受け取ったコンビニ袋の中から一枚のチョコレートを取り出した。 最近、新しく出たクィム味のチョコレートだ。 そしてそれを俺に差し出した。 「疲れた時は甘い物がいいんだよ」 「え、でも…」 「いいから」 ギターさんが微笑む。 俺は素直にチョコレートを受け取った。 「ありがとう」 深夜には変わった来客が多い。 でも、俺は深夜のバイトも嫌いじゃない。 END [*前へ][次へ#] |