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小さなお話たち
リングだけじゃ縛りきれない


「ねえねえ、好きだよ」

耳元で愛を囁く

これは最早日課となりつつあることだ。

彼と過ごし始めて早2年。

最初の頃は恥ずかしがって僕を睨んで来ていた彼も今や慣れたのか何も言わず僕の腕の中で聞くだけになっていた。

「君の睨んで来ていた顔も好きだったけど
今みたいに大人しい君も好きだ。愛してる。」

人に馬鹿みたいに愛想を振りまいていた僕に息の抜き方を教えてくれたたった一人のかつての悪友であり、親友であった彼は僕の恋人になって、そして妻・・・のようなものになった。

法の下、妻と言い切ることができないのが悔しい話だ。
本当は海外に行って式を挙げるのもいいなと思ったけどそんなことをしたら今度こそ照れ屋な彼は逃げちゃうかもしれないからね。
今は君と僕を繋ぐリングがあればいい。彼のリングにそっと舌を這わすと彼がビクッと体をはねあげる。

彼はこのリングを“悪趣味だ”とか“変態みたいだ”とかいうけど僕はそんなことちーっとも思わない。

それに、本当ならリングだけじゃなくて鎖で繋ぎたいくらいな所を彼が何でもするからそれだけはやめろと言ったから仕方なくやめてあげたんだ。
リングのことは大目に見て欲しいね。

白く美しい彼の首を衝動的に絞める

「・・・っ!!ぅ・・・っ、ぐ・・・ 」

苦しそうな声を上げる彼にハッとなった。

思い出してちょっとイライラしちゃったようだ。

ごめんごめんと謝って手を離すと彼は僕が怒っていると思ったのか怯えたような目で僕を見てガチガチと奥歯を鳴らした。

「なんにもしないって〜。
怖がらしたことは謝るから許してよ!ねっねっ?」

そういうと安心したように肩を下ろした。





・・・あー、まだダメだな。
僕が彼をこの部屋に縛り付けてもまだ僕に対して怯えているということは心はまだ僕に縛り切れてないんだ。
だって僕に怯えるということは生きることを諦めてないってことでしょ?
ダメじゃん。僕の物になるってことは僕に命も捧げることだよ?って最初に言ったのに・・・


やっぱり心までは彼の首に絡みついたリングだけじゃ縛りきれない。









end

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あきゅろす。
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