頭痛
1
頭が痛い。
隣に佇む少年は、場違いなテンポのへたくそな口笛を吹いている。爆音は遠い。人の群れは既に下層へ流れて行ったのだろうか。
頭が痛い。
米神に指を押し付けてみる。何も起こらない。
「はあぁ……」
そこで漸く、水月は深いため息をついて、隣の少年の頭を全力で殴ったのだった。
「痛いよー」
卯は殴られた後頭部を抑えてぼやいた。360度どの角度から彼を見たって、痛みに顔をゆがめているようには見えないだろう。
そんな彼の様子を見て、水月はまたため息をついた。
この空間に時間はない。そんなことを頭の隅で思った。
終わりは死か地かの二択だ。ここで誰かに殺されるか、この白く赤い建物から出るか。
時間など意味も持たない。誰もが勝利を目指し、あるいは多く殺すことを目指す。
商売は好きだ。誰かを騙すことに負い目を感じるほどの善人でもない。
けど殺しは違う。頭のどこかで分かってる。
けど殺さなければいけない。頭のどこかで分かってる。
「あー、頭、痛いわぁ」
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