FOR YOU 今日の日を、写真に収めよう For YOU 悩む期間、実に1ヶ月と3日…長い期間を経たにも関わらず、結局当日が来てしまった事に朝気が付いたソラはがっくりと肩を落としていた。 『楽しみにしといてくれよなッ』 そう言ってしまった先月の自分の発言に後悔するも、時既に遅し…正に今日はその当日。こんな事なら一年前から悩めば良かったとさえ思えてしまう。 『うう…ど、どうしよう…っ』 今日はナマエの誕生日…大好きな大好きなナマエの誕生日なのだ。そのナマエに喜んで貰おうとマニーを貯め、ちょっと高い物でも買おうと意気込んでいたにも関わらず、結局何も買えなかった。 『だって…ナマエが何欲しいかとか…分かんないしっ』 一番に可愛いアクセサリーを考えた。ナマエが着けたら可愛いだろう、ナマエも喜んでくれるに違いない。そう思って貯めたマニーを握り締め、アクセサリーショップに向かった。 『おォっ、これ可愛い…ッ』 可愛らしいピンクの宝石の付いたネックレス。鏡に自分の姿とネックレスを映し、ナマエの顔を当て嵌めた。これならナマエも喜んでくれるだろうと会計に向かおうとした瞬間、今度はブルーの宝石の付いたブレスレットを見付けた。 『こ、これも似合いそうだなァ…』 ナマエの細く白い腕に、このきらきら輝くブレスレットが装着されたら…想像すると、もしかしたらこのネックレスよりも似合うかもしれない… 『こっちにしようかな…』 そして、この優柔不断な行動が幾度も繰り返され、結局は何も買えずにその店を出る事になった。その他、可愛らしいぬいぐるみや可愛らしい置物、可愛らしい服…時には下着の店にまで足を運んだが、恥ずかしくて1分も経たずに店を飛び出した事もあった。 『うあーっ、ど、ど、どうしよう…っ』 『あれっ、ソラだ』 重い足を動かし、いつの間にか辿り着いていたのはナマエの家の前…。ナマエを見た瞬間、嬉しくなったが、ソラは直ぐ様バツの悪そうな表情を浮かべる。プレゼントも何も持たない状態で、ナマエに顔を合わせる事は出来ない、とソラの内心が呟く。 『どうしたの、ソラ…何か元気ないよ』 『う、うん…べ、別にっ』 今日はナマエの誕生日…それなのに何もプレゼントを用意出来なかった自分。明るく振る舞おうとしても、その事が頭の中で延々と回り続け、思わず泣きそうになってしまった。 『あの、さ…』 言い辛い…大好きなナマエの誕生日プレゼントを買えなかった自分など、嫌われてしまうかもしれない。然し、ちゃんと謝らなければナマエがもっと悲しんでしまう。それだけは何としても避けたいソラは漸く重い口を開く。 『俺、ナマエの誕生日にプレゼントあげたくて…けど、何あげたら良いのか分かんなくて…』 少し、視界がぼやけてきたような気がする。この先を言った後のナマエの悲しそうな顔を見る事が辛く、少しばかりの沈黙と重い空気が流れた。 『それで…その……』 プレゼント買えなかった、ごめん…その言葉が言えず、ソラは地面を見詰めた。これを言えば、ナマエとはもう普通に話せなくなりそうで、ナマエが自分に笑顔を見せてくれなくなりそうな気がした。 『ソラ…嬉しい…っ』 『…ごめん……って、えッ』 ナマエの言葉に、ソラは思わず顔を上げる。瞬間、目に映ったのは満面の笑みを浮かべたナマエの姿…。なぜ、笑っているのか…理解出来ずにソラは首を傾げる。 『だってソラ…あたしの事、そんなに考えてくれてたんだもん。それだけで凄く嬉しいよッ』 確かに、この1ヶ月と3日は、今まで以上にナマエの事を想い、悩んだ…しかし、結局答えを出す事が出来ず、形にする事も出来なかったというのに、ナマエはそれが嬉しいと言う… 『だから、ね。そんな悲しい顔したら嫌だよ…だって今日は、あたしの誕生日だもん』 『ご、ごめん…そうだよなっ』 そうは言っても、やはりナマエにプレゼントを差し出せなかった事が余程悔しいのか、中々気持ちの切り替えが出来ないソラの手を取り、ナマエは再びソラに笑顔を向けた。 『じゃあね、ソラ…ソラの取った貝殻の中で一番可愛い貝殻、あたしに頂戴っ』 『え…そんなモンで良いの…』 それならば今すぐにでも差し出す事は出来る。しかし、そんな簡単な物でナマエが本当に喜んでくれるのかと言えば、それは分からない。 『うん、だから…一緒に探しに行こうよ』 ソラの瞳を真っ直ぐに見、尚もナマエはソラに笑顔を向ける。その笑顔はソラの大好きな、自分を元気付けてくれる明るい笑顔… 『あ、やっと笑ってくれた』 漸くソラの顔が笑顔に変わる…いつものソラに戻ってくれた事に、ナマエは一安心した。そして今度はソラがナマエの手を取り、二人は海岸へと向かうのであった。 (物より思い出。悩んだ時間も、思い出。) あ、でも…こっちの貝殻も可愛いな…ッ …………………………… 080914めぐ(100318訂正) for 廻琉 …………………………… 相互、本当に有難う ございましたっv いつまでも大好きな 相方さんに捧ぐ…*゚ |