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闇に届かず

(闇に届かず)
距離はおよそ、永遠




本当に、言ってみただけ。
なんて事はないけれど、後悔したのは事実だった。


『はは、まァ…機会があれば、ね』


彼、京羅樹 崇志は忙しい。忙しいというのは別に普段の生活が、という訳ではなく。私生活…プライベートが忙しいのだ。そのプライベートを忙しくさせている原因の一つが私な訳だけれど。


余りに社交辞令的な言い方だった為に、それは本命の彼女だけに与えられるイベントだと言う事をすぐに理解した。


『良いよ、言ってみただけだから』


『おっと…拗ねるなよ。別に深い意味なんてないから』


確かに私と彼の間に深い意味なんて在って無い様なもの。それは別にしても、女性に対する躱し方を心得ていると言っても過言ではない京羅樹 崇志と在ろう者があんなバレバレな言い方をする訳がない。


『お祭り行きたいなァ…』


今考えれば、私のあの言葉は彼を試していたのかもしれない。彼に本命がいる事は薄々気付いていたから。唯、確信を得る為だけに出た言葉でもあり、私には似合わない、女の子としての願望だったのかもしれない。


『拗ねてないよ、本当に言ってみただけだし』


『冷たいねェ…ま、そこも含めて好きなんだけどさ』


そう、京羅樹 崇志はこういう男だ。上手い具合、絶妙な距離感を保って自分の元から離さない。離れて行く女の子、離れられない女の子…恐らく彼と関係を持った女の子殆どが後者に今も位置している。或いは彼好みから外れて捨てられたか。


『京羅樹君は、優しいのか優しくないのか分からないね』


『勿論、優しいに決まってんだろ。普段でも、こっちでも…な』


べたべたする風が頬に当たって、その上から彼の手が私の頬を包む。この手は今まで何人の女の子を包んで、突き放して来たのだろうか。


『ナマエ…愛してる。大好きだ…』


『私も』


きっと好きだし大好きだし愛しているだろう。そこら辺は物凄く曖昧だけれど、それでも彼から離れたくない私は彼を好きなのだと思い込むしかない訳で


『祭じゃなくっても俺は、ナマエの傍に居られたらそれで良い…』


『…そう、だね』


だけど本当は手を繋いで貴方と行きたいのよ、私は


















(空けた予定だって、入らなければ意味がない)


上がる花火は輝いて滲む



















20110718めぐ



あきゅろす。
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