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告白

告白
大事な時は、今







『なァ…ナマエ…』


『どうしたの、亮ちゃん』


昼休みの時計台に結崎とナマエ以外に人影はなく、まだ残る残暑の風を二人して受け止めてる。最近、結崎が購買に走らなくなった為、昼休みに二人の時間が増えた。


『あ、いや…弁当、サンキューなッ』


『ううんッ…あ、美味しく、ないかもしれないけど…』


冗談混じりで言ってみた、ついでに自分の弁当も作って欲しいと。それに対し、嫌な顔一つせず、次の日にはボリューム満点の二段弁当を作ってきてくれたナマエ。お菜は全て冷凍食品ではなく手作りであり、結崎は毎日その一つ一つを味わって食べる。


『そんな事ねェよっ、凄ェ美味しいしッ。…っと、そんな事じゃなくて…』


話したかったのは弁当の話ではない…と、結崎は思い出し、照れたように頭を無造作に掻く。本当は言いたい事があったのに、上手く言葉が出て来ず、二人の間に少しの沈黙が流れた。


『あの、さ…』


『うん』


この先、どう切り出したら良いのか…昨夜の予習は完璧であった。数学のノートの提出を忘れるぐらいに悩み、恥ずかしながら枕に向かって囁き練習した時は自信たっぷりだったのに…


『あのな…その…』


『う、うん…』


いつになく真剣な表情を見、これはただ事ではないとナマエも覚悟を決める。先程の弁当の続き…もしかしたら本当は美味しくなかったのかもしれないとナマエは少し心配になった。


『…す、』


『す…』


す、で止まった結崎の言葉。思わずナマエも結崎の言葉を繰り返し、次の言葉を待つ。す、から予想される言葉は酢の物。結崎の言葉を待ちながら、ナマエは密かに今日、蛸と胡瓜を買いに行かなければと内心思う。


『ッす……すき……やき』


『……え』


予想を大きく外し、結崎の口から出た言葉にナマエは拍子抜けする。一方の結崎は、照れ隠しの為に思わず加えてしまった語尾に思い切り後悔した。


『す、鋤焼き…』


『あッ…いや、鋤焼き…く、食いてェなあっ、鋤焼きッ』


ここまで来ると修正不可能。こうなれば鋤焼きを通さざるを得なくなってしまい、一晩掛けて考えていた台詞や計画も今や結崎の頭の中からすっかり消え失せてしまっている。


『あ、うん…じゃあ明日は鋤焼きを作るねッ』


『お、おうッ…楽しみだなァ…はははっ…はァ…』


笑うしかない、自分の馬鹿さ加減を。本当は今まで言えなかった告白をしよう、そう決めていた。彼女いない歴17年に終止符を打った結崎にとって、この台詞は難関そのものであった。


『あ、そろそろ予鈴なるな…戻ろうぜッ、ナマエ』


『うんっ』


時計を見ると、予鈴数分前。立ち上がり、ナマエの手を取ると、言いたかった言葉の想いを手に込める。言えなかった自分の情けなさを痛感し、結崎はナマエの手をいつもよりしっかりと握った。


『亮ちゃん、大好きだよ』


『お、俺も……』



















(言えぬなら、態度で示せ、ホトトギス)


明日こそッ…絶対に言うっ



















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080909めぐ(100404訂正)
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