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たからもの



大切なモノは、どうしたら
護る事が出来るのかな…







『ナマエちゃん、それ頂戴よ』


『え…だ、駄目だよ…だってこれは…』


ずっと昔、まだ亮ちゃんが天照郷にいた頃。ナマエは亮ちゃんに可愛らしい黄色の花を貰った。凄く嬉しかったのに、天照郷の名前も知らない女の子がナマエの頭に着いたお話をせがんで来た


『良いじゃない、私の方が似合うもの』


『でも…』


ナマエが渋ると、それはもう何度も何度もせがんで…


人と接する事が苦手なナマエはこのお花をあげなかったら苛められるんじゃないかって…怖くて、怖くて…


『…うん…良い、よ…』


到頭あげてしまった


『ナマエ、俺があげた花…』


『…ごめんなさい…』


亮ちゃんは次の日、凄く悲しそうな顔をしていた。ナマエはそんな亮ちゃんの顔を見て、最低な事をしてしまったんだと気付いた


でも、怖かったんだもん…


『ナマエ、これ、絶対誰にもやるなよっ』


それから亮ちゃんはナマエに何かくれる時には必ず誰にもやるなよ、が口癖になった。山で見付けた小石、道場で貰ったお餅、亮ちゃんが引っ越す時にくれたピアスも…


亮ちゃんの悲しい顔を見たくなくて、亮ちゃんに貰ったモノを誰にもあげたくなくて、ナマエは亮ちゃんの約束をずっと守って来た


『これはお前にやるんだからなっ』


例え、あの子にせがまれようとも…ずっとずっと大事にして来た。亮ちゃんが引っ越してからもずっと、ナマエが月詠に来てからもずっと…


『あのさ…ナマエに渡したいモノがあるんだ』


『うん、なァに亮ちゃん』


それは、今日のカリキュラムが終わって寮に帰る道の途中だった。いつもとはちょっと違う亮ちゃんの様子、ナマエの手を握る亮ちゃんの力がちょっとだけ痛かった


『絶対、絶対絶対ぜっったいに誰にもあげんなよ。めちゃくちゃ大事なモンなんだからな』


相変わらず亮ちゃんは誰にもあげちゃ駄目だって言う。あの時からずっと、大好きな亮ちゃんがくれたモノはずっとずっと大切にしてるのにな…


『そ、そんなに大事なモノ、ナマエが貰っても良いの』


『馬鹿、ナマエだからやるんだって』


冬の夜は寒くて、亮ちゃんから白い息が言葉と一緒に漏れる。亮ちゃんの鼻と頬っぺたが赤くて、ちょっと可愛いと、場違いな事も思ってしまう


でも、そんなに大事にしてるモノって何なんだろう…


『あ、有難う…』


『んじゃ、やる』


そう言って、亮ちゃんはナマエの真正面に立つともう片方の手もしっかりと握った。亮ちゃんのドキドキが手を通じてナマエにも伝わって…


『…』


『…』


亮ちゃんと見つめ合ったまま、ちょっとの間沈黙…


もしかして、もうナマエは亮ちゃんの大事なモノを貰ったのかなって思ったけど、ナマエの手は亮ちゃんにしっかりと握られていて…それ以外は何も持ってなくて…


『りょ、亮ちゃん…何も…』


凄く凄く言い難い事だったけど、勇気を出して一言。そしたら亮ちゃんの顔が途端に真っ赤になって、それで…


『…俺』


『え…』


確かに、そう言った


『だから、俺をやるの。ナマエに』


『……』


つ、つまりそれは亮ちゃん自身をナマエにくれるって事で、それは…亮ちゃんがナマエだけの存在になるって事で…


『で…絶対に誰にもやらねェからナマエをくれ』


恥ずかし気にそう言った亮ちゃんに、ナマエは嬉しくて恥ずかしくて…それで、頷いたら凄く、幸せな気持ちになった











(冬の空にキスの雨)


幸せが暖かい…




(たからもの)















091117めぐ
121104編集




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