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表現不能な優しさ






愛しき君に、捧げる






(表現不能な優しさ)






『そういや今日、ナマエの誕生日だっけか』


『…っ』


我ながらやっぱり凄い記憶力だと思う。って言っても半分は山勘で、ナマエの顔を見て確信を得た訳だけどね。今日はナマエと組んで討伐任務…天照郷の温いやり方なんて一生分かんないね


『お、覚えててくれたの…』


『俺っちがナマエの誕生日忘れる訳ないっしょ』


良く見ればナマエの頭には新しいニット帽が飾られていて…どうせ晃ちゃん辺りがあげたんだろうね。晃ちゃんは昔からナマエを大事にしてるから…


『折角だからナマエにプレゼントあげるよ』


『えっ…い、良いよッ…』


夜道でも分かるぐらいに顔を真っ赤にして、ナマエは首を横に振る。本当、分かり易いって言うかさ…


ナマエは俺に惚れちゃってる。俺は、というと一人の女に全てを捧げるなんて事は、今すべき事じゃないと思ってるし…相手がナマエってのも考え難い。でも、ま…幼馴染みな訳だし、何せ運命共同体な訳だから、優しくしてやらねェと…とは思う


『俺っちに遠慮なんかすんなって。何でも言ってみ』


『ほ、本当に大丈夫だよっ。ナマエ、もう子供じゃないんだもん…』


だったらその、晃ちゃんに貰って嬉しそうに被ってるナマエは一体何なんだろうねって意地悪を言い掛けて止める


なんせ、今日はナマエの誕生日だからね


『だったら俺っちと今からデートにでも行こうか』


『えっ…』


期待と不安が入り交じった瞳。本当にナマエは分かり易い…変に媚びるよりかは全然マシなんだけどね


『交渉成立。さ、行こうか…ナマエ』


『あ…ま、待って…っ』


手を握ってゆっくりと歩き始める。勿論、ナマエの速さに合わせて


今日の彼女との約束は取り敢えずキャンセルのメールを送信して、電源も落とす


『今日の俺っちはナマエの彼氏だからな』


だって今日は、愛しい幼馴染みの誕生日だから…













(愛なんかじゃない気持ち)


そんな薄っぺらな繋がりじゃねェからな















091017めぐ
121104編集




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