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reckless










好きなのに、空回り…








reckless








『うう…』


『え…っと…』


夕陽が差し込む教室に机に向かい合う形で座る生徒の姿が2つ…。他に生徒の姿はなく、静まり返った教室に響く少年の微かな呻き声。天照館高校1年の仁科 麒一と同じく天照館高校2年の##NAME2## ナマエである。


『…もう一度最初から説明するね』


『す、すみません…』


机の上には数学Iと書かれた教科書に一定の間隔を空け、数式が書かれたノート…。所々に狸の絵が描かれている。


『この式をまずy=に変換するのね、そしたらこの2つの数式に代入して、xとzの式に…』


『…』


麒一は少しばかり後悔していた。期末考査で赤点を取らないように、と南宮に何度も念を押されてはいたが、それ程…否、全くと言っても良いぐらいに麒一は数学が苦手である。


そこでピンチヒッターとして呼ばれたのがナマエ。どこか抜けた所もあるが、数学だけは南宮と並ぶ実力のナマエ。ナマエに助けを求めた事は間違いではないだろう…


しかし、問題はその次であった


『ちょっと長くてミスしちゃいそうだけど、代入した部分を2乗して…』


『…』


麒一が先程から目を向けているのは教科書でもなければノートでもない…ナマエであった。ノートを見つめるナマエの瞳、長く黒い睫毛、薄ピンクに染まる頬…ナマエの全てに釘付けになり、勉強どころではなかった


『あ…ここ…ここが計算ミスだね』


『…ッ』


顔を上げ麒一に向かって苦笑するナマエに身体中の体温が上昇するのが自分自身でも分かる。揺れる髪、動く指に嫌という程反応してしまう


『麒一君…どうしたの』


『いっ…いえ…ッ…よ、余所見してました…』


何度想いを伝えようとしたかは分からない…ナマエの傍に居る事が出来れば良い、そう思う気持ちとは裏腹に、ナマエに触れてみたい…微かな性的興味があるのも確かであった


『ちょっと休憩しようか…一気に進み過ぎちゃったし』


『は、はい…』


疲れているのだろう、と感じたナマエは暫しの休憩を提案する。ナマエの優しさも麒一がナマエに惹かれた理由の一つ。いつだって自分を気に掛けてくれるナマエが麒一は大好きであった


『あ、ナマエ、飴ちゃん持ってるの。ちょっと待っ…あッ』


『わ、大丈夫ですか…っ』


机に掛けてあった鞄から飴玉の入った袋を取り出した瞬間、袋から飴玉が2、3個零れ落ちる。落ちる飴玉を取ろうと麒一も手を伸ばしたが、飴玉は麒一の指を跳ねて教室の床へと落ちてしまった


『あの、僕拾いますね』


『あ、良いよナマエが…』


同時に椅子から降り、床へと屈む。途端、ナマエの香りが麒一の鼻を掠め、ナマエが座っていた時よりも当たり前ではあるが近くにいる事に気付く


『……先輩…ッ』


『え……きゃ…っ』


机を挟んで向かい合っていたその距離が、まだ我慢出来る距離だったのだと気付いた時にはナマエの肩を強く押した後だった…


















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