try hard girl
赤く染まる頬は、ある意味犯罪
try hard girl・4
『だ、駄目…っ』
『何で』
本日の訓練も終わり、皆が寮へと帰った今でも明かりの灯るBITルーム。そこには月詠学院退魔班の一人であるナマエと、月詠学院退魔班専任教官である京羅樹が向かい合わせに立っていた
『駄目ったら駄目ェ…』
『だから何で』
この押し問答が続いて早30分は経とうとしている。ナマエは一向に首を縦に振らず、京羅樹もまた、一歩も引こうとはしない
『だ、だって…』
単に理由を聞いただけであったのだが、ナマエはその理由を言おうとはしない。それ以前には、京羅樹の誘いを断ると言う、他の女性からすれば有り得ないといった行動をとっていた
『…はァ…オーケィ。ナマエは俺の事好きじゃないんだな』
『えっ…ち、違…』
京羅樹はわざとらしく溜め息を吐くと、うんざりしたような顔を作って見せた。その京羅樹の行動に驚いたのはナマエ。いつも強引に言い包められてしまう筈が今日はやけにあっさりしている
『俺が折角、教官としてナマエの相談に乗ってやろうってのに…』
『だ…だから…』
京羅樹は面白くなさそうに言葉を吐き出すと、子供のように拗ね、そっぽを向いてしまった。普段見る事のない京羅樹の姿に、可愛いと不覚にも思ったが、今はそれどころではない
『言い訳なんか聞きたくないね』
『きょ…教官…っ』
これは本当に怒らせてしまったか…と思っても後の祭り。正直に京羅樹に相談の真相を話して、誘いを断ってしまえば良いのだが、ナマエにとって、そうする訳にはいかなかった
『はあ…傷付いた』
わざとらしく言葉を口にし、内心ナマエがどうするかを観察する。勿論、そんな京羅樹の芝居がナマエに見抜ける訳もなく、ナマエはどうすべきか心底悩んでいる様子であった
『もう明日から遠征行くか『きょ、教官に…ッ』
京羅樹の言葉を遮り、そっぽを向いてしまった京羅樹に後ろから抱き付くような形でナマエが声を上げた。これ以上誤魔化す事はナマエにとって、耐え難いものであった
『教官にあげる…プレゼント…だから…』
『…え』
一つ一つ、言葉を紡いでいく。京羅樹に聞いた、男性が貰ったら嬉しいもの。それを聞いた後、京羅樹がナマエの買い物に付いて行くと言い出し、ナマエはそれを否定した。それらは全て、京羅樹を驚かせる為の事であった
『だから…買った物、見たら…楽しみ減っちゃうから…』
『えっと、つまり…』
一方の京羅樹は、珍しく理解に時間が掛かっていた。自分の誕生日ではない、何かを貰う程の事をした訳でもない…となると、一体何故、ナマエは自分にプレゼントを贈ろうとしているのか…
『プレゼント貰うの好きって…』
『いや、好きだけど…って、ナマエ…もしかして…』
そう言えば少し前、結崎や深山木にどういった女性が良いのかと聞かれた時、冗談で"貢いでくれる女の子"と言った気がする。ナマエはそれを聞いていた為に、そう言う結論に辿り着いたのか…。
『だから……あ』
『…本当、純粋って言うか、可愛過ぎって言うか…』
明らかに冗談である言葉を律儀に守ろうとするナマエが愛しくなり、京羅樹は自分を抱き締めるナマエの手を解き、逆にナマエを両腕で包んだ
『ナマエは特別だから、余計な事で悩まなくて良い…そんな事しなくったって、俺はお前に十分惹かれてるから』
『教官…』
まるで子供をあやすように頭を撫で、自分を驚かせようと懸命に計画を立てたナマエに謝罪の意を込める。
『俺の一番好きなモノ、ナマエだから』
計画は無駄になってしまったが、敢えてねだるならばナマエ自身が良いと、より一層京羅樹はナマエを強く抱き締めた。その後、ナマエが京羅樹の言葉の真意に気付くまでに、もう少し時間が掛かる事になる
(君にリボンを付けて…)
レディが目を閉じたら召し上がれ
081107めぐ
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