彼女??
ああ…こんなに大好き
この気持ちは誰にも負けない
彼女??
『でさァ…あの子ってマジで付き合ってるんだって』
『え、確か一つ上の先輩だよね』
何一つ変わらない、いつもの放課後、教室で何気ない人の恋話に華を咲かせる女子高生。いつの時代も、どこの高校にも変わらず在る光景
『それがその子…あ、ちょっとナマエ、ナマエッ』
『何よ……って……麒一…』
教室のドアの向こうに見えるのはナマエの幼馴染みである仁科、そしてその隣には可愛い顔の女子が笑顔で話しながら歩いている
『なになに、仁科君って彼女いたんだ…どうなのよナマエっ』
『知らない、聞いてないし…』
いつだって仁科は何かがあれば必ず自分に報告してくれるのに…しかし、ナマエはそれが悔しい訳ではなく、仁科の隣を自分以外の女子が歩いている事が悔しくて仕方ないのだ
『何よ…麒一の馬鹿…』
独り言のように、誰にも気付かれないように呟き、ナマエはどかっと椅子に深く腰掛けた
『……ナマエちゃん…何か怒ってない』
『べっつにィ…』
怒ってないと言えば嘘になるのだが、これは怒りと言うより発散出来ない嫉妬の念。家が隣同士で、毎日共に登校する仁科は少しばかりおどおどしながらナマエの後ろを歩く
『……昨日』
『え、あァ…見てたんだ…』
昨日、その言葉だけで分かってしまう…それがまた悔しくて、ナマエの機嫌は更に拍車を掛けて悪くなっていく
しかし、その次の言葉が中々出て来ない…。聞いてしまったら今の関係が崩れてしまいそうで…しかし、聞かないと今まで以上に気になってしまって仕方ないのだ
『あれ、彼女…』
『うん、彼女』
そう、あまりにも…あまりにも簡単に仁科が口にしてしまったその言葉にナマエは愕然とした。しかし、それ以上に悲痛な想いが込み上げて来て…
『麒一の馬鹿ッ』
『へ…あ、ちょ…ナマエちゃんッ』
どこかでスターターの合図が聞こえた気がして、ナマエは一目散に学校目掛けて走り出した。
誰からも、仁科からも逃げるように…
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