ホワイトデー企画(結崎)
こういう楽しみって、待ち切れない…
もういくつ寝ると…
『…やっぱナマエはこっちの方が喜ぶかな…』
ホワイトデー1週間前、ナマエへのお返しを買う為ダンスの練習を早目に切り上げ六本木へと繰り出した。普段滅多に入らない女の子向けの店に多少気劣りはしたが…
『や、でもこっちの方がナマエっぽい……』
可愛いナマエに合う可愛らしい物を次々と手に取ってはその手を降ろす。先程からそれの繰り返しで、近くにいた女子高生の何人かは自分を見て微かに笑っていた
『あー…くそッ、ナマエって何が好きなんだよーっ』
いつも隣にいて、昔からナマエの事は何でも知っていた筈であったのに…肝心のナマエの欲している物が分からず思わず投げ遣りになってしまう
『亮ちゃん、ナマエ、あのぬいぐるみ欲しいッ』
ふと、いつかナマエと遊びに行った時にゲームセンターでナマエがUFOキャッチャーの一つを指差した事を思い出した。ナマエに良い所を見せようとしたのだが結局その日、ナマエにそのぬいぐるみをプレゼント出来なかったあの日…
『そうだ…あれならナマエ、喜んでくれるよなッ』
手に取った小物を丁寧に置いて走り出す。まだ置いてあるだろうか、誰かに取られていないだろうか…色々な事が頭に浮かぶが、結崎は取り敢えず走った。ナマエが欲しがっていた、あのぬいぐるみの元へ…
『ッ…あった…』
もう店の隅に置かれてしまったUFOキャッチャー…自分を取ってくれと言わんばかりに結崎を見つめる可愛い視線。しかし、結崎はただ一つを狙う。狙うはあの…ピンクのくま
『絶対ェ取ってやるからなッ』
有りったけの100円玉を入れ、ボタンを動かす。ナマエの喜ぶ顔が見たい…ただ、その一心で結崎は幾度も幾度もボタンを動かした
『…取れたッ。やったぜ…っ』
ころん、と微かな音を立てて現れたピンクのくま。愛らしいくまの表情にナマエの笑顔が重なり、思わず顔が綻ぶ。
『あ…亮ちゃんッ』
『ナマエ…何でここに…』
名前を呼ばれ、振り向いた先には愛しい彼女、ナマエが立っていた。結崎は思わずぬいぐるみを背中に隠し、必死でぬいぐるみの存在に気付かれぬよう取り繕う
『あの…前亮ちゃんとここに来た時にね、ピンクのくまさん……あッ…な、ないっ…』
『…』
結崎の額に一筋の冷や汗…きっとナマエもこのピンクのくまを取りに来たのだ…しかし、自分が最後の一個を取ってしまった為にピンクのくまはそこには存在しない…
『と、取られちゃったんだ……』
『…』
しょぼん、と言う表現が似合う今のナマエの顔…結崎はそんなナマエの顔に弱い。このままだとナマエは泣き出してしまうかもしれない…。結崎は軽く溜め息を吐き、ピンクのくまを手前に出した後…
『あっれー。ナマエ、頭に何か乗ってるぜ』
『え……あ、あッ…くまさんっ』
こっそりとナマエの頭にピンクのくまを乗せ、驚いた素振りを交えつつ、とうとうナマエにピンクのくまを渡してしまった
『ど、どうしてここに…』
『こいつ、ナマエの所に行きたかったんじゃねッ』
驚きながらも目を輝かせるナマエに、自分が取ってあげた事を話すのは内緒にし、良かったなと一言添えた後ナマエの頭を優しく撫でた
『よしッ、暗くなっちまったし、早く帰ろうぜ』
『うんッ、えへへ…』
ホワイトデーのプレゼントを何にするか本気で迷う結崎の右手を握り、もう片方の手にピンクのくまを握ったナマエの顔は笑顔でいっぱいだった
君の為なら幾らでも悩もう…
080305めぐ
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