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君ニ届ケ

(君ニ届ケ)傍にいて…ずっとずっと大好きな人




『亮ちゃん…ッ』


『よーナマエッ』


もうどれくらい傍にいるだろうか、ナマエは天照館からの交換留学生。つまり、天照郷出身の結崎とは幼馴染みに当たる。ナマエが月詠に来てからと言うもの、毎朝寮の広場での待ち合わせは日課になりつつあった。


『いやー悪ィ悪ィ…なんか起きれなくてよ』


結崎の遅刻癖は相変わらず。始めの内は頑張って起こしに来ていた館脇も、既に1週間で根を上げたと言うのに、ナマエは文句の一つも言わずに結崎を待ち続けている。


『そういやお前、数学の宿題やったか』


『うん』


口下手、と言うよりも男性に対して免疫の殆どないナマエは、幼馴染みの結崎にさえ緊張して上手く話せないでいる。それも特に気にしない亮は自分のペースで、しかしナマエの返事も聞きながら話し続ける。そんな二人を見た理緒が、一見すると二人の話が噛み合っていないようで、噛み合っているから不思議だと以前言っていた。


『まじでかッ…今日放課後までだよなー…頼むナマエッ、写させてくれっ』


『う、うん…』


足幅の大きい結崎に遅れを取らないようにナマエは小走りで歩き、何とか返事する。直ぐ様結崎から歓喜の声が上がり、ナマエもつられて笑顔になる。


『ナマエが来てくれて助かったぜ。ナマエが来る前なんて道文も理緒も写させてくんねェからさァ…』


『そ、そうなんだ…あッ…』


相変わらず結崎のスピードについていこうと小走りに歩くナマエは落ちていた小石に躓き、拍子に傾いた身体を止める事が出来ずに思わず前のめりになってしまう。


『…ッと、大丈夫か』


『あ、有難う…』


力強い結崎に引き寄せられ、傾いた身体は何とか結崎の腕の中に収まった。そのまま、結崎がナマエを抱き締める体勢になり、その瞬間ナマエの時が留まってしまった。


『鈍臭ェなァ、ナマエは…ま、それがお前らしいけど』


ナマエの体勢を元に戻してやると、結崎はナマエの頭を軽く撫で、苦笑いを浮かべる。ナマエは結崎の大きくてゴツゴツした手、温もり、笑顔、全てが大好きだった。昔から泣き虫なナマエを護ってくれ、慰めてくれていた結崎。幼馴染みより恋へと変わったのはいつからだろう…


『ナマエを護るのが俺の役目だからなッ…へへっ』


そして結崎も出会った日からずっと、ナマエを護りたいと…ナマエの笑顔、小さな身体、声、全てを護りたい、自分が護らないと…そう想い続けて来た。それが恋だと言われたら分からないが、護る事が自分の役目だと信じていた。


『よし、遅刻しそうだし、ちょっと走るかッ』


『うんッ…』


結崎がナマエへと手を伸ばすと、ナマエも結崎の手を取る。そして、今度は結崎がナマエの歩幅に合わせながら軽く走り出す。握られた手から自分の気持ちが届けば良いのに…自分に背を向ける結崎を見詰めながら、ナマエは心の中で呟いた。
















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