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try hard girl





憧れは…好きに変わる





try hard girl・2






失礼しましたと頭を下げ、なまえは職員室の扉を閉めた。大量のノートを抱え、ほぼ前の見えない状態…そんな時に前ばかりを気にし、下に何があるか確認出来ない状況であったからなまえは盛大に躓いた


『きゃッ…』


『っと……大丈夫』


自分が転けてもノートだけは…と、ノートを死守し、後は転けるだけだと意を決した途端、後ろから何者かに支えられ、助けられた。直ぐ様後ろを向き、礼を言おうと助けてくれた主を見上げ、なまえは絶句した


『ひ、緋勇君……』


『大丈夫。怪我なくて良かった』


3―C、緋勇 龍麻と言えば転校初日から何故か惹かれてしまう人間と言う事で有名であった。無論、なまえにとっても、いつの間にか彼を目で追ってしまう、掴み所のない不思議な青年であった。


『あ、有難うッ…じゃ、じゃあ…っ』


直ぐ様頭を下げ、なまえは緋勇の前を去ろうとする。同じクラスであれ、この時が初めて、緋勇と言葉を交わしたなまえ。それが憧れの存在であれば尚更、居ても立ってもいられない状態であったのだ


『あ』


『え…わ、わ、わーっ』


なまえが立ち去ろうとした瞬間、緋勇の一言でなまえの動きが止まる…。しかし、傾き出した大量のノートの動きは止まる事なく綺麗な凸曲線を描き、なまえの目の前から崩れ落ちてしまった


『…』


『えっと…大丈…夫』


職員室から出ておよそ数歩…落とさないよう気を付けろと、教師に言われた言葉が走馬灯のように頭の中を駆け巡る…。床に落ちて散らばってしまった、ついでに隣のクラスの分も、と渡された大量のノートを拾い上げる気力は見る見る内になくなっていった


『…はい、これで全部だね』


『ご、ごめんね、手伝って貰っちゃって…』


一番始めにノートに触れたのは緋勇。すっかり放心状態になってしまっていたなまえも緋勇の行動につられ、無関心に通り過ぎて行く生徒達を余所に大量のノートを二人で拾い上げた


『それにしても凄い量だね…って、なまえさん日直だっけ』


基本的にノート運び等、力仕事は対である男子の日直、日誌等の整理は女子の日直と、いつの間にか出来ていた暗黙の了解があった。それが今日は女子であるなまえがノートを運んでいる。緋勇は不思議そうになまえ本人に尋ねた


『うん、蓬莱寺君が昼休みからいなくなって一人なんだけど…』


『京一…』


質問の答えに出て来た聞き覚えのある名前…そう言えば昼休み早々に京一がサボると言っていた事を思い出す。きっと自分が日直と言う事すら、HRに遅刻した京一には伝わらなかったであろう…


『あッ…』


『3階まで大変でしょ、手伝うよ』


予鈴が鳴るまで後、約5分…緋勇はなまえが持っていたノートをひょいと持ち上げると、なまえの数歩前を歩き出す。始め、ノートが自分の手から無くなっていた事すら気付かなかったなまえは、その事に気付くと急いで緋勇の後ろを歩く


『あ…有難う……えっと、今度お礼させてね』


『良いよ、気にしないで』


力仕事は手伝うのが当然でしょ、と付け足し緋勇は笑顔で答える。しかし、なまえにしてみれば普段関わらない緋勇との滅多とないチャンス。口実と言う訳ではないが、少しでも仲良くなるチャンスなのだ


『良いのッ…あ、あたしが…したい、から…』


『え、うん…じゃあ、お言葉に甘えさせて貰おうかな』


顔を真っ赤にさせ、必死な顔で言葉を発したなまえの気持ちを緋勇が気付かない訳がない。緋勇は一瞬驚いたような顔を見せたが、すぐにいつもの笑顔で頷いた


『そうだな…じゃあ、一日##NAME2##さんとデートってのでどうかな』


『えっ…』


少し恥ずかしそうに笑う緋勇を、なまえは初めて見たような気がした












(教室まで…あと少し)


時間…止まらないかな…















081115めぐ
121103編集




あきゅろす。
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