夏祭り(京一)
ね、あたし、いつもと違うでしょ
祭り
いつも気を抜いてる訳じゃないし、あいつの気を惹く目的って訳でもない…
『よォ…ってお前っ』
『何よ、似合わないって言ったら帰るから』
だって今日は祭だから…、あたしだって一応は着ちゃう訳よ。浴衣を…。似合わないのは承知の上だし、こんな時、雛乃ちゃんみたいな子だったら…とか、思うけど
『馬子にも衣装ってやつ』
『…帰る』
なのに京一ときたら、本当…悪かったわね、似合わなくて…動き辛い浴衣じゃ右ストレートを食らわせる事すら適わなくて、あたしはくるり、と方向を変えた
『いやッ冗談冗談っ。十分だぜ』
『…』
別にいつもの事だし気にしないけど…って京一の手を握って歩きだす。本当、あたしも京一も素直じゃない…
ま、お互い様ってやつかな
『あっ、綿飴…ッ』
『ばっかお前…高校生にもなって綿飴なんてよー…』
…。
あたしだってそんな、綿飴が欲しい訳じゃないっての。ただ…そう、ちょっと言ってみただけで…
『お前ェにはよ、こっちのが似合ってんぜ』
『え…あ…』
そう言って、あたしの唇に触れた、甘酸っぱい香り…赤くて、きらきらした飴がコーティングされた、林檎飴…
『先に買っててくれたの』
『そ、そんなんじゃねェよ』
そう言ってあたしから視線を外す京一の顔も、林檎飴みたいに赤くて…思わず、笑みが零れた。なんて、単純過ぎるけどさ
『好き。京一のそういう所』
『…何だよ、やけに素直じゃねェか』
だって唇に触れた林檎飴が、やけに甘かったから…
080804めぐ
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