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サドンデスゲーム




狙うは貴方

狙われるはアタシ



(サドンデスゲーム)




『いらっしゃいませー』


いつもと変わらない日常、仕事、客。何をする訳でもなく、刺激もなく、ただいつもと変わらずに客を迎え入れて送り出す。


ただ、それだけ


『温めますか』


出来る事ならアタシの心を温めて下さい、なんて、暑さと渇きでおかしくなった頭から聞こえて来るのはフューネラルマーチ。尤も、店内に流れるのは真夏を彩るサマーチューン


『いらっしゃいませー』


時刻はもう27時を廻った頃だろうか、本日の店番はアタシと少し暗目な性格をした先輩。この時間帯になると客は少なく、若者がコンビニの前で青春を謳歌しているぐらい


そんな時、彼はやって来た…


『いらっしゃいませー』


『…ん』


少し赤茶色い髪に、黒いTシャツ、見た目は何処にでもいるような普通の男性。しかしながら何処か吸い込まれそうな眼をしている…


好みかも…


何も変わらない日常で訪れる一時の癒し、それがこれ…特に何かをする訳でなく、ただいつも通りに仕事するだけ。ただ、視線を彼へと送るだけ


『あれ、もしかして なまえちゃん』


『え…』


日常が変わる瞬間は、やけに普通だった


どこかで見た事があるのだろうか、こんな格好良い知り合いはいただろうか、遥か先まで思考を巡らせ、漸く1年前の記憶に辿り着いた


『あッ…京一先輩ッ』


『おッ…俺の事知ってんだ』


知らない訳がない。この男、蓬莱寺 京一はアタシが4ヵ月前に卒業した、1年前にアタシの先輩で、高校で1番格好良いと謳われていた男…


『先輩、この近くに住んでたんですね』


『そうそう、全く寝れねェから立ち読みに来たんだけど、まさかなまえちゃんがここで働いてるとはなァ』


何でアタシの事を知っているのか…推測ではあるが、京一先輩のクラスの人とアタシが一時付き合っていたからだと思う。と言うか、それ以外に共通点もないのでデフォルトでそう言う結論に辿り着く


『何かちょっと見ねェ内に大人っぽくなったなァ。可愛いのは可愛いまんまだけど』


『そ、そんな事ないですよッ』


臭い台詞も淡々と言って退ける。それがまた嫌味でも気障ったらしくもなく、寧ろ似合ってしまう。それがまた女性の心を掴んで離さないのだ


『んな照れなくても良いって、んじゃあ仕事頑張れよッ』


『は、はいッ』


久しぶりにバイト中に作り笑い以外で笑った気がして、京一先輩の香水の香りは、とても心地良いものだった…














あきゅろす。
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