バレンタイン企画夢(龍麻)
お好みなら
誰より甘く…
キミに捧げる恋の味
君に会う為だけに、電車に乗って…君に渡す為だけに君の家へとやって来た。喜んでくれるだろうか…君は、嘘でも笑ってくれるから…気持ちが分からない
『いらっしゃい』
『こ、こんにちはッ…』
良く考えたら龍麻君の家に行くのは初めてだ…玄関で靴を脱いで初めて気が付いた。どうせならもっと可愛い服を着て来たら良かった、なんて後の祭り
『紅茶か珈琲どっちが良いかな』
『あ、あの、お構い無く…ッ』
龍麻君は苦笑いを浮かべると、アタシの頭を撫でて、そんなに緊張しなくても良いよ、って言ったんだけど…アタシは緊張しない訳にはいかない。だってアタシは今から大変な事をするから…
『龍麻君…ッ』
『ん、どうしたの』
いつもの笑顔、いつもの声、いつもの優しさ…チョコを渡して帰ろうか…そんな弱気にさせられる龍麻君の優しさ。だけど、今日は賭けに出ないといけない…アタシは大きく深呼吸をして、火照る頬の熱さを勇気に変える。
『チョコとアタシ、どっちが欲しい…ッ』
『……へ』
言った達成感と同時に恥ずかしさが込み上げる。京一君が龍麻君にこう言ったら喜んでくれる、って…でも結局龍麻君からの返事は一向になく、アタシは下がった頭を何とか上げて恐る恐る龍麻君を見る、と…
『た、龍麻…君…』
『……』
意外だ。いつもの龍麻君なら苦笑いとか兎に角笑顔で優しくスルーするのに…今日の龍麻君は、アタシより赤い顔をして呆然としているんだから…
『あの…龍麻君…』
『あ、ご、ごめん…なんか、驚いちゃって…』
暫く黙ったままだった龍麻君は漸く落ち着いたのか、片手で頭を掻きながら、だけど視線をちらちらと色んな所に動かしている
『………あの、さ、…俺、なまえが欲しい…かな』
『…えッ』
今度赤くなったのは勿論アタシの方。てっきりスルーされると思っていたアタシの賭け。それを龍麻君は恥ずかしそうにアタシを選んでくれているんだから…
『駄目、かな…』
『…駄目、な訳ない…よ…』
触れた龍麻君の指が普通の温度だったのはきっと、アタシの体温と龍麻君の体温が同じだったからだ…
貴方の為なら
いくらでも甘くなれる…
080207めぐ
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