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100124〜100306
彼のケーキを頬張りながら





(気付けばイベント間近)





実家がケーキ屋、勿論ケーキ屋を継ぐらしいあたしの彼氏。付き合ってからは手近にケーキがただで食べられるものだから、学校が終わったら彼の家に行くのが最早日課


『ねェ、ケーキの作り方教えて』


だからあたしはケーキなんて、というかお菓子自体作った事がなく、作る必要もないと思って生きてきた2年間、実際今でも作る必要がないと思ってるんだけどたまには彼女らしい事をしなきゃいけないなとも思う


『は…おま、普通彼氏に聞くかそういう事』


『だって知らないんだもん』


本買うのは面倒だし、折角ケーキ職人が彼氏なんだから頼らない手はない訳で。彼氏は彼氏で素っ気ない奴だから一筋縄でいかない事はちゃんと理解してる。だからあたしの頼みを心底面倒臭そうに溜め息を吐いて


『そういうのは友達に聞け』


明白な態度で雑誌に目を通すフリ。っていうか雑誌上下逆様なんだけどね


『その子の誕生日にあげんの。あんたの友達の、えっと…坂下君』


坂下君ごめんなさい、名前を使わせて頂きます。今度会ったら取り敢えずお礼だけ言おうと心に決めて、奴の反応を待つ。2年も付き合えば嫌でも奴がどれだけ嫉妬深いかは自惚れを通り越して分かってしまう。坂下君の名前を聞いた途端、大して読んでもいない雑誌から視線をあたしに移して、眉間に皴を寄せれば明らか苛ついている


『…ってか何で。お前坂下と仲良かったっけ』


『坂下君はあんたより優しいからね』


坂下君と話した事は多分ないんだけど、こんなぶっきら棒な奴と中学の時からずっと付き合ってくれてる彼はとてつもない程優しくて、心の綺麗な人だと言う事は良く理解出来る。そんな坂下君をダシに使うなんてあたしは最低な人間だなと罪悪感を覚えてしまったけれど…


『…何ケーキ作るんだよ、ケーキっつったって種類いっぱいあるだろ』


『あんたに関係ないでしょ、ケーキ屋の跡取り君』


効果は覿面だったりもするから本当、坂下君には感謝してもしきれないぐらいに感謝するあたし。


『教えてやるって言ってんの、早くしねェと気ィ変わんぞ』


奴が教えてくれるのならそれはそれは美味しいケーキが出来上がるでしょう。ベタにハート型で、シュガーパウダーで飾られた甘い甘いチョコレートケーキ


『あれ、あいついつ誕生日だっけ』


『2月14日』


全てはその日の為だけに…










(坂下君の誕生日は8月)


ケーキ屋の跡取り君のケーキは勿論美味しい
















100124〜100306掲載


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