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『あれ、デミックスにアクセル…門の前で何してるんだろう』


『本当、デミックスさん帰りたがってるみたいだけど…』


ラクシーヌさん、シオンさんと別れた後、少し進めば聳え立つ大きな門の前でアクセルとデミックスさんを見付けた。だけどデミックスさんは何故か門に背を向け、アクセルは溜息を吐いている。何事かと思ったけれど、少し離れた場所からは二人の会話を聞き取る事は出来ない。


『何かあったのかな…降りてみよう』


『うん』


こちらの会話は短めに、あたし達は急いで下降する。多少の風による抵抗はあったものの、上がる時よりかは幾分か楽で、安心してソラに身体を委ねた。2人に近付けば近付く程デミックスさんの泣きそうな声が耳に届き、これは只事ではないと感じる。


『アクセル、デミックスっ』


『お、良い所に来たな』


あたし達の姿に気付くとアクセルは心底助かったという様な表情を見せる。一方のデミックスさんはあたし達の姿を見るなり…


『ソラ、ナマエーっ』


『わ、わわ…わァっ』


あたし達二人に思い切り突進。あたしとソラの声が重なった時には身体のバランスが崩れ、二人して地面に手を着く。下が柔らかい草だったから痛くはなかったけれど、正直デミックスさんにタックルされた身体は少しだけ痛かった。


『い、一体どうしたんだよデミックス』


『…帰りてェ』


無論、それはデミックスさんの様子を見れば一目瞭然。あたし達が気になっていると言えば、その理由だと言うのにデミックスさんは一言、小さく零した。キングダムアイランドの王女であるカイリちゃんのお城でパーティーだと言うのに、帰りたいと言うデミックスさんは一体どうしたのだろう。


『お前等さ、人混みって気持ち悪ィ…ってならねェの』


『人が多い方が楽しいだろ』


要は、人混みに酔うのが嫌だとデミックスさんは言っている。ソラはと言えば、何ともソラらしい返事。確かにあたしも人が多い方が楽しいと思うようになった。だけど…


『デミックスさんの気持ち、ちょっと分かるかも…』


『お、良かったなデミックス。仲間出来たぞ』


あたしだって、少し前までは一人が気楽だった筈だ。学校で群れを作り、互いに気ばかりを使う苟且の友情ごっこを傍観していた。だから分かる、彼が人混みを嫌う気持ち。だけどそれでも、この世界は違う。上手く言葉にする事は出来ないけれど、


『でも、ソラがいるから大丈夫だよ』


『へ………何でそこでソラ…』


デミックスさんがそう言うのも無理はなかった。確かに何の脈絡もなくソラの名前が出たのだから、彼からすれば変な話だろう。だけど、それは気付いていないだけだ。決してソラが希望の光であるとか、そんな大層な話ではない。


『一人だと周りが煩いって思うけど、ソラが…友達がいたら全然気にならない』


『…良く分かんねェ……』


そう言うあたしだって良く分かってはいない。分かってはいないけれど、周りの雑音が、ソラと居ればどうでも良くなる。もしかしたら安心しているのかもしれない。周りに大勢いる中で自分を見失わない、手を引いてくれる誰かが存在している事に。


『だから、皆で手を繋ごうよ』


『手…っ、ナマエだけなら未だしも何で俺が男と手なんか繋がなきゃなんねェんだ…ッ』


あたしの提案は、デミックスさんの叫び声とアクセルが吹き出した音によって消えてしまった。唯一、ソラだけが大きく頷いてくれたけれど。何故叫ぶのか、何故吹き出すのか…理由が分からなくて、思わず首を傾げる。


『くくっ…ナマエも段々、ソラに似て来たな』


『そ、そうかなあ…』


良く分からないまま、アクセルに頭をぐしゃっとされて、言われた言葉にあたしはまた首を傾げる。きっと表情とか外見云々ではなくて、内面の事だろうと思うけれど、それはそれで今一しっくりと来ない。


『でも、ま…お前の言いたい事は俺も何となく分かる。友達ってのはそんな感じだろ』


ぼそっと、隣にいるあたしだけに聞こえるぐらい小さな声でアクセルが呟く。何となく、本当に何となくしか分からないけれど、誰かがいて安心する気持ち。普段は当たり前で気付かない事だけれど、とても心強い。


ああ…そうだ、友達に定義も公式もなかったんだ…



















(Cymbidium goeringii...)




それが、今の気持ちだから



















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20101101めぐ
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