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とにもかくにも、助かったあたしは彼の所有する海賊船に乗せて貰っている。おまけに濡れた身体に新しい服を着せて貰い、雨に奪われた体温を取り戻すべくふわふわな毛布まで借して貰っている。随分親切な海賊だけれど、物語で言えば海賊は余り信用しない方が良いと思う。


『俺はロクサス。ロクサスで良いぞ』


『ナマエです。帰り道も分かりません』


随分と幼い海賊は、多分あたしと同じ歳ぐらい。海賊って言わなければどこにでもいる少年に見える。ロクサスさんに言って良いものか少し悩んだけれど助かった今、とにかくソラの家に帰らなければ他に帰る所がないのだから仕方がない。せめて住所でも在れば良いのに、森と海の広がるキングダムアイランドに住所なんてない事は明らかだった。


『そっか…送ってやりたいけど、来た場所も分からないよな』


『あの、陸に降りれば何とかなると思います』


見ず知らずの海賊にそこまでして貰うのは幾ら平和なキングダムアイランドでも怖い。せめて波に揺れる海から陸に降りればソラが見付けてくれるかもしれない。そんな一縷な望みにでも頼らなければ帰る事すら不可能だろう。そう思って言葉を繋ぐと、ロクサスさんは首を大きく横に振る。


『それは駄目だ。あんな飛び方するナマエ、置き去りになんか出来ないだろ。』


『……そうですけど…』


さり気なく、飛び方を否定されたあたしは想像以上に酷い飛び方をしていたんだと思い知らされる。確かにあんな飛び方したら次こそ助からない。だけど帰り道も分からない今、陸を延々と歩く以外に方法も何もない。何か手掛かりになる言葉でもあればと、落ち着きを取り戻した頭で考えた。


『ソラ…って奴、知ってるか』


『え……あ、はい』


意外な名前がロクサスさんの口から出た事に少し驚いた。あたし自身もソラの名前が浮き上がったけれど、流石にこの広い世界でたった一人の名前を出したとしても知らないだろうと言葉には出さなかった矢先の名前だったから、驚いた様子が露骨な程顔に出てしまう。


『ソラ、知ってるんですか』


『ああ。人間がこの世界に来るなんて、あいつ以外しそうにないからな』


確かに種族の違う、人間であるあたしをキングダムアイランドに連れて来るなんて、今まで出会った皆を見ればソラ以外しそうにない。どうして見ず知らずのあたしを連れて来たのかは分からないけれど、今はそんな事よりもロクサスさんがソラを知っていたという事が大事だった。


『ロクサスさんがソラの知り合いだったなんて意外です』


『あいつは知り合いなんかじゃないよ』


ロクサスさんがソラを知っているという事は、ソラの元に帰る事が出来る。あたしが安心したように笑うと、ロクサスさんは大きく首を横に振る。知り合いではないのにソラを知っているなんて、あたしにとっては意味が分からない。あたしが小首を傾げるのを見るとロクサスさんは続けて口を開ける。


『俺は、ソラなんだ』


堂々と言い放った言葉に驚かない訳がない。というか訳が分からなかった。確かに笑った感じなんかは似てなくもない…と、無理矢理結び付ける事は出来るけれど、他に結び付けようがない。目の前にいる彼がソラだなんて、誰が信じられるだろう。あたしをからかっているのかと、あたしは怪訝な目を彼に向けた。


『あれ…ソラから聞いてないのか』


『聞いてないです。ソラは余り自分の話はしないから…』


然も知っていて当然だと言わんばかりに驚くロクサスさんに、半ば自棄気味に答えて気付く。そう言えばあたしはソラについて知っている事が余りにも少ない。勿論、友達だったら何でも知っていなければならないなんて事はないけれど、それにしてもソラを対して知らないくせに信じていたなんて、少しお人好しだったかもしれない。


『俺は…俺達は、元々一人の人間…、ソラという子供だったんだ』


ソラを信じる信じないで悩んでいる場合じゃない。ロクサスさんの口から出たソラという人物は、あたしの知っているソラなんだろうか…今は、そこに悩んだ























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