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Attention

(街角Twilight-1-)
新生活の始まり始まり




目の前の家を見て、立て看板を見て、再び家を見上げた。何だろうこの豪邸、何だろうこの威圧感。ナマエの予想を遥かに超えるこの家は、どうやら私が今日から住む民宿。民宿というのは、お城を小さくした家の事を言うのだろうか、


街並みがフランスとかパリとか、そんな感じだから浮いていないように感じるけれど、ナマエが今まで住んでいた街とは全く違う。この街自体が映画のセットみたいな造りだった。



『王国荘…間違いないよね』


立て看板には間違いなく王国荘と書いてある。住所だって間違いない。だからここは王国荘で、ナマエが今日からお世話になる民宿で、何度見直してもメモした住所と同じ住所…


『あっ、もしかしてナマエちゃん』


『え……あ、はい…』


背後でした声に振り向くと、黒髪の可愛らしい女の子が立っていた。お姫様みたい…そう第一印象で思った。買物袋を提げている、お城のお姫様。誰だろう、この街には初めて来るから知り合いはいない筈だけど、確かにナマエの名前を呼んだ彼女はにこやかにこっちへ近付いて来る。


『あたしはシオン、王国荘に住んでるの』


『あっ…』


そうだ、どこかで聞いた声だ。入居希望の電話をした時に応対してくれた声。女の子が少ないからって、今すぐにでも入居して欲しいと言ってくれた彼女。シオンさん…って言うんだ。元々恥ずかしがり屋で、電話した時も緊張で上手く話せなくて…でもこの声で安心した。人柄が滲み出たような柔らかい笑顔に魅入ってしまった。


『どうしたの、ぼうっとして…』


『あ、いえ…み、見惚れてました…』


顔と声が一致して、ついつい見惚れてしまっていた。この際、見惚れない人がいない訳ないと思う事にする。緊張で足がガクガクする。お隣りさんなら未だしも、シオンさんと今日から同じ家に住む事になる。下手な事を言わないようにしていたつもりがいきなり見惚れてました、だからきっと変な人って思われたに違いない。


『ナマエちゃんって高校2年生だよね。あたしと同じ…だから、敬語は要らない、かな』


『は……じゃなくて…う、うん』

思わず出掛けた言葉を飲み込んで返事をした。そしてシオンさん…シオンちゃんがナマエと同じ歳という事に密かに驚いた。だってシオンちゃん、ナマエなんかより遥かに大人っぽくて落ち着いていて、とてもじゃないけど同じ歳には思う事が出来ない。きっとシオンちゃん、学校では人気者なんだろうなァ…


『あ、シオンで良いからね、ナマエ』


そう言いながら玄関に手を掛けるシオンちゃ…シオン。まだまだ緊張は解けないけれど、シオンの笑顔はナマエを安心させてくれるものだった…


















(王国荘へようこそ)


王国荘は新生活を応援します





(Attention)


















100219めぐ



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