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(嫌い嫌いも裏返し)
ならば正々堂々…とはいかぬものだろうか




今日の佐助は少しばかり忙しい。


『ナマエちゃんナマエちゃん』


『あげないからね』


某の昼飯は食堂で適当にと小銭を渡された。毎日風邪を引いても弁当を欠かさない佐助なのだ、何か理由があるのだろうと食事を済ませ、廊下を歩いておると見付けたのは佐助と、佐助の友人、ナマエ殿。


『俺様ナマエちゃんから貰えるチョコが一番好きなんだけどなあ』


『それ、さっきの子にも言ってたわよ』


にこにこと笑う佐助にうんざりといった表情を見せ、ナマエ殿は速足に佐助から逃げている。この二人、某が見る限り何時も斯様な感じであるが、一体どういった関係なのか、某には分からない。


『いやいや、まじだって』


『両手にチョコ抱えた人に言われても説得力ないよ』


ナマエ殿の言う通り、佐助の両手には綺麗に包装された箱。中身はチョコレート…今日は佐助の誕生日であったろうか。いや、某の知る限り、佐助の誕生日は今日ではない。


『んじゃーこれ、捨てようか』


『…それはそれで最低だけど』



両手に持った箱を大袈裟に持ち上げて、平然と佐助は言う。人様に貰ったであろう大量のチョコレートをそのまま捨てるなど、罰当たりというものだ。ナマエ殿が呆れた口調で言葉を投げれば佐助は満足気に笑う。怒られて笑うというのも変な話だ。


『ね、俺様優しいから皆の気持ちを無視出来ない訳よ』


『大丈夫、あたしはあんたに気持ちはない』


大袈裟に持ち上げたチョコレートを元の高さに戻したのを確認した後、ナマエ殿は再び歩き出す。


『んな事言って、俺様の下駄箱にチョコ入れた内の一人、ナマエちゃんでしょ』


『…』


先程まで佐助の言う事全てに言い返していたナマエ殿が佐助の一言で急に黙ってしまう。下駄箱にチョコレート、どういった繋がりがあるのか。そういえば今朝某の下駄箱にもチョコレートが入っていた時、落とし物かと聞いた某に佐助は貰っておけと言った事を思い出す。


たまたま早く来たらさ、ナマエちゃんが入れてるの見ちゃったんだよね、と某がチョコレートと下駄箱の関係を考えている間に佐助とナマエとの間では話が進んでいた。


『それなのに欲しがるって、性格悪過ぎ』


少し離れた位置にいる某にも聞こえる程に大きな溜め息を吐き、ナマエ殿は佐助を睨む。佐助から逃げようと速足になる事も忘れて、二人は向き合った形で並んでいる。


『あ、本当に入れたんだ』


『っ、騙したわね…ッ』


佐助の一言に今まで冷静に対応していたナマエ殿が一変。そういえば某と佐助は共に登校したが、下駄箱でナマエ殿は見掛けなかった。何故そんな嘘を吐く必要があるのか…これが駆け引きというものなのだろうか。


『いやいや、まさかこうも簡単に引っ掛かってくれるとはねェ』


『やっぱりあんたなんか大嫌いッ』


恋とは難しいものでござる…



















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110201めぐ
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