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(聖☆バレンタインデー!)
それは女の子が最も輝ける日
今日が何の日か、よっぽど興味のない男子以外は朝からどこかそわそわするのが学生時代の青春と言うべきなのかもしれない。クラスメイトでありSGコースのカリキュラムを共に受ける仲間、ナマエの幼馴染みである結崎 亮なんて一番分かり易い。
『あー何か良い匂いする』
『きっ、きっ、気の所為だよっ』
そわそわするどころか、思い切り本命にアタックする辺り、温和しくチョコを待つ男子達よりマシなのか質が悪いのか、正直僕には分からない。ナマエが控え目という性格を考慮しているのかは勿論定かではなかった。
『本当かなあ…なァんかナマエから甘い匂いする』
『ち、違うよナマエじゃないっ』
この二人の会話と言えば小学生レベルかそれ以下か。子供みたいに戯れ合っている。僕の幼馴染みにもこれぐらいの会話を常に掛けて来る子がいるけれど、幼馴染みというのはこんなものなのだろうか。
『ええェ…絶対ナマエだと思うんだけどなあ…』
『ほ…本当に違うんだから…』
僕の席の前にナマエが座り、その前に亮が椅子を反対向きに座る。そこから見える亮の顔と言えばだらしがない程ににやけている。ついでに言えば可愛いとナマエの密かなファンである一部の男子生徒からの視線がナマエと亮に集中している。その後ろにいる僕の身にもなって欲しいよ、本当に。
『じゃあ、ナマエの右ポッケに入ってんのは何かなァ』
『これは亮ちゃんにっ……あ………』
なんて思っていると二人に新たな展開が訪れていた。どうにも引っ掛からないだろう亮の引っ掛けに引っ掛かるのは純粋なナマエならでは。ナマエの純粋さは僕も嫌いではないけれど、時に危険だ。ナマエはきっとオレオレ詐欺に引っ掛かるタイプだ、間違いなく。
『俺に、何だよナマエ』
『い、意地悪っ』
こうなってしまえば逃げ道なんてナマエには残されていない。いつもの髪型が違うのも、化粧が丁寧なのも、香水を普段付けない筈のナマエから今日は良い匂いがするのだって、実際は亮との今日に臨む為なのだから。
『だってナマエのチョコ一番に欲しいしさ』
『亮ちゃん…』
子供の戯れ合いから一転、甘い雰囲気。ナマエが亮にチョコを渡して、亮がナマエに盛大に抱き着くまで後数秒もないだろう。そうなってしまえば自分の席なのに僕が居辛くなるのは目に見えている。それだけは拒否しなければと、僕は到頭口を開いて…
『…どうでも良いけど、僕の席から離…』
『ミッチー、今日は何の日でしょうっ』
『勘してよ…本当…
(だって今日は聖・バレンタイン)
(取り敢えず星、3つです)
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110201めぐ
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