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(愛のハンターさん)
葉佩 九龍と申します。




さっきから飽きもせずに彼女が親友の機嫌を窺っているのは、今日が女の子にとって特別な日だからだ。


『皆守君はカレーとチョコどっちが良い、かな』


『……カレー』


この会話を軽く5分置きに繰り返している。甲ちゃんが何よりカレーを選ぶ事なんて、甲ちゃんの彼女であるナマエが一番分かっている筈だというのに。だよね、と呟くとナマエは心底悲しそうな表情を浮かべる。


『お前さっきからそればかりだぞ』


『だ、だって…』


先程から進まない会話に痺れを切らしたのは甲ちゃんの方で、核心的な一言にナマエは言葉を吃らせる。そろそろこの、世界一のハンターと言われる俺、葉佩 九龍の出番だろうと、息を潜めていたロッカーを思い切り開け放って


『甲ちゃんの鈍チン、短小、早ろ……っ、痛』


『いきなり現れて何だお前は』


華麗でド派手な登場は親友、皆守 甲太郎の華麗な蹴りによって阻まれたけれど、体勢を立て直してゲットレのポーズを一つ、


『今日は女の子の一大イベント…そう、バレンタインだぞっ』


『…あァ、今日2月15日…ん、14日だっけか』


毎日がカレーデーな甲ちゃんにとって、今日が14日だろうが15日だろうが関係ないのは良く分かる。しかし、だ。彼女がいるってのにそんな態度は宜しくない。という訳でチキンなナマエが鈍感な甲ちゃんにチョコを渡せるよう、本日も俺の出番って訳。


『因みに俺はナマエからもう貰った』


一瞬驚いた顔を浮かべそうなナマエを俺の背中で隠し、甲ちゃんからは一切見えないようにする。当たり前だ、ナマエのチョコなんか俺は貰ってない。逆に可愛いナマエに俺特製調合チョコをあげたいぐらいだ。敢えてそんな嘘を吐くにはそれなりの理由がある訳で、俺は甲ちゃんの様子を窺った。


『…ふん、良かったな』


そうそう、これなんですよ。


『あ、今イラってしたろ。甲ちゃん今俺がチョコ貰ったって聞いてイラってしたろ』


『蹴り飛ばすぞ』


何だかんだ言って、ナマエが好きな甲ちゃんが、俺がナマエからチョコを受け取ったと聞いて嫉妬しない訳がない。流石にバレンタインの意味を甲ちゃんが知っていた事に感謝しつつ、今度は


『素直じゃないなあ甲ちゃんは。なあ、ナマエ』


『え、あ……えっと…』


ナマエの反応を見る。今だ、行けと言わんばかりにナマエを俺の前に出して、優しく肩を叩いてやる。いつもチキンなナマエだけど、本日バレンタインという特別な日は恐らくナマエにも力を貸してくれる筈だ。


『明日マミーズのカレーで…今日はチョコじゃ駄目、かな…』


『…今日だけだぞ』


因みに俺がナマエからチョコ貰ってないってのは甲ちゃんには永遠に内緒って話だ。


















(君の心をゲットレ)


今日は女の子がハンター



















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20110201めぐ
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あきゅろす。
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