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ビジョン、(オリジナル)

ビジョン、溶けても良いよ、




『お前、馬鹿だね』


あ、笑った…


改めて疑問に思う事は沢山あった。いつから限界を感じていたのか、いたのか彼を1番に想う事が出来なくなってしまっていたのか。始めから二人の間に愛情などなかったのかもしれないとまで思える中、この状況で、どうして笑えるのか。全ての疑問は一瞬で塗り替えられてしまった


『で、なかった事にしようってのはどれぐらいの期間を希望してんの』


『……』


暮の思い掛けぬ一言に菫は自分の喉に違和感を感じた。何を言っているのか、日本語を理解してくれているのか。否、有名私立大学卒業後は大手IT会社に勤めエリート出世経験済みの暮に限って日本語が通じないなんて事はない。唯、そんな暮だからこそ自分の発言など無駄でしかないのだと、菫は思う


『あんま長いと面倒だから』


左手で煙草を燻らせ窓から見える夜景を黒い瞳に映らせる。暮の黒い瞳はいつだって先を見詰める。数分単位で生きているからか暮のビジョンは何年も、何十年も先を見据えている。その先に自分がいるなどと酔い痴れた事もあった


『お前には見えないのかよ、そんな言葉すら無駄でしかないって事が、さ』


『暮…無駄なんて言い方、ないと思う』


まるで自分と関わっている事すら無駄だと言われているような言い方。暮は元々そういった言い方をする。それでも昔はまだ優しく包んだ言い方をしていた。柔らかい布に包まれたナイフと剥き出しのナイフ、刺されればどちらが苦しみをより一層生むのだろうか。どちらにしても痛いのだと、菫はなるべく優しい言葉でそれを否定する


『お前は俺を選んだ時点で未来も選んだ。…過去を否定する人間に未来はないぞ』


『違…否定してるんじゃない…唯、』


暮のビジョンに追い付かなくなってしまった自分がいる。暮のビジョンに映らないだろう自分がいる。過去の自分よりも現在を否定している自分の為に言葉を探すも見付からない。終わりを望んでいた筈が今は暮の言葉を否定するも今一つ言葉に欠ける自分がいた




















あきゅろす。
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