かたこい(王国心空)
(かたこい)
どうして俺と同じなのに…
ナマエ♀が化粧をしている。普段してないって訳じゃないけど、今日はいつもより気合いが入っているというか、目だったり唇だったりがいつもより明るい気がして…
『あれ、気付かれちゃったか…』
そう言って笑うナマエ♀は言葉とは違い、柔らかく笑う。
『デート、か』
『うん、久しぶりにロクサスが時間出来たからって』
ナマエ♀は俺と仲が良くて、クラスの違うロクサスをずっと好きだった。ロクサスは、俺と双子。昔っから結構モテて、でもロクサスが誰かと付き合うなんて聞いた事がなくて…だからナマエ♀がロクサスに告白する時は俺が慰めてやらなきゃって思ってたのに…
『迎えに来てくれるって…ドキドキするな、久しぶりだから』
『そっか…』
ずっと二人を見て来た。辞書を借りに俺の教室にロクサスがやって来た時から、今まで。ロクサスはどんな物が好きか、ロクサスの好きなタイプはどんな子か。答える分には簡単だった…だって俺達は双子。似てない双子だけどナマエ♀を見るロクサスの目は、俺と同じだったから…
『早く掃除終わらせなきゃっ』
俺に向けてナマエ♀が笑っているのに、何だかナマエ♀の見つめる先が違うようで切ない。それはずっと前から、ロクサスに出会った時から痛いぐらいに感じていた。
『ソラ、』
『…っ』
ナマエ♀に名前を呼ばれるだけで、泣きそうになる。嬉しいのに泣きそうで、泣きそうなのに泣けない…
『どうしたの、なんか元気ないね』
『っそんな事…そ、それより掃除、俺が代わってやるよっ。折角のデートなんだろ』
本当はロクサスに連れて行かれるナマエ♀なんて見たくない。ロクサスに笑い掛けるナマエ♀も、笑顔で返すロクサスも。二人を繋ぐ手も何もかも…
だけどナマエ♀の掃除を引き受けたらナマエ♀はロクサスの元に行っちゃうのに
『え、大丈夫だよ。ロクサスが来てくれるのはもう少し後だし』
『良いからっ。その代わり今度俺が掃除当番の時に代わってくれよ』
俺は、ロクサスになりたい。ナマエ♀の笑顔も手も何もかも手に入れたロクサスが羨ましくて、ずっとずっと思ってる。
大好きなんだ、ナマエ♀が…
『』
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