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未来変更不可

(未来変更不可)
あなたに手紙を書きました






広間には珍しくナマエ一人しかいなかった。多分デミックスは寝てるんだろうけど…いつでもナマエの周りには誰かがいたから…特にナマエが14歳になってからは皆が放っておかない感じだったから、ちょっとだけ不思議な感じがして、ナマエへと歩み寄った。


『あ、お帰りロクサス』


『ナマエ、何書いてるんだ』


見れば色取り取りの紙に一生懸命何かを書いているナマエ。14歳になった今でもクレヨンを愛用しているところが何ともナマエらしくて可愛い。


手なんかクレヨンでぐちゃぐちゃだ…


『んーとね、らぶれたーッ』


…正直、良く意味が分からなかった。ラブレターの意味云々じゃなくてナマエがラブレターを書いてる意味。それに、何より気になるのはナマエが誰宛てに書いてるかって事で…


『誰宛てに書いてるんだ』


やっぱりナマエはデミックスに書いてるんだろうな…なんて、聞いた後にちょっと後悔。ナマエがデミックスの事を好きなのは知ってるけど、面と向かって言われるとショックだ…


『ロクサスのもあるよ』


『俺のも、って…他にも書いてるのか』


ところがナマエは意外な…いや、それがナマエらしいと言えばナマエらしい返事を返す。俺に書いてくれてるって…でも、俺にも、だからな…


俺が聞くとナマエは小さい指を一本一本折り数えながら


『えっと、デミックスにシオンにアクセルに…それからラクシーヌとマールーシャとゼクシオンと…』


『…つまりは全員に書いてるんだな』


このまま数えてたら10本の指では足りなくてナマエが困るだろうから取り敢えず途中で止める。ナマエは俺の言葉に大きく笑顔で頷いてみせた。


『らぶれたーは大好きの気持ちを書くってゼクシオンが教えてくれたの』


『ふうん…』


俺には分かって良いのか分からない大好きの気持ち…


何の迷いもなく大好きって言えるナマエがちょっとだけ羨ましい。言葉にするのもどうしたら良いか分からないのに、それを書くって言うんだから…


『あ、ロクサスも一緒に書こうっ』


『いや、俺は…』


多分書けない…そう言おうとしてナマエが明白に泣きそうな顔をしちゃうから…


『か、書く。いっぱい書く』


『わァい、ナマエにも書いてねっ』


俺もデミックスの事が言えないぐらいにナマエには甘いな…


ナマエは好きな色…ピンクの紙を何枚か取り出すと俺に渡して、それからクレヨンを俺とナマエの間に置くと再びラブレターを書くべくクレヨンを握った


『大好きな気持ち…か…』


考えれば考える程難しくて、言葉になんか出来そうもない…


俺はナマエが好きなんだと思う。勿論アクセルやシオンも好き。だけどナマエは特別…キスをした時、多分それよりちょっとだけ前…もしかしたらずっと前から好きだったのかもしれない。


ナマエの事を考えると胸の奥がぎゅってなって、頭がぼうっとして、それから無性に抱き締めたくなる。


それをどう文章にすれば、俺は好きを表す事が出来るんだろう…


『ナマエ、好きって、どう表現するんだ』


『、…んと、この辺がほんわかして、幸せな感じかなっ』


好きの次は幸せ…それも俺には良く分からない言葉。何を基準に、いつを基準に俺は幸せを感じているのか…もしかしたら幸せすら感じていないのかもしれないから…。


『ロクサスとこうしてる時間は幸せ、大好きな人が傍にいると嬉しくなるでしょ』


『……そうか…それじゃあ俺も幸せ、なのかな』


大好きなナマエが傍にいて、同じ時間を共有している。今だけは俺の隣にナマエがいる…それが幸せなら、俺が今ナマエに出来る事は一つ…


それが好きを表す事なら、俺はナマエに…


握ったクレヨンは紙に擦れて色を映し出す。強く握れば折れそうなクレヨンはキーブレードとは違って優しく丁寧に、まるで好きって気持ちを扱うかのように手で包んで優しく描く


『…よし、出来た』


『え、早いよロクサスっ』


書き終わってから、ナマエに倣って紙を白い封筒に入れた。ナマエはまだ何通かしか書けてなかったけど、俺は唯一枚、ナマエ宛てにラブレターを書いた。


俺の大事な気持ちに蓋をするように封筒をゆっくりと閉じる。


『ナマエー』


『あ、デミックスだっ』


途端、広間の奥でした声は俺とナマエが一緒にいる時間に終わりを告げる。


制限時間付きの好きなんて…


『ナマエ』


デミックスの所に行こうとするナマエの手を引っ張って、俺の方に向かせる。咄嗟に握った白い封筒に少し皺が出来てしまったのは恐らく気のせいじゃない筈


『ラブレター、俺からナマエだけに…大好きの気持ち』


『有難うロクサスっ』


渡したラブレターをナマエは嬉しそうに受け取ると笑う…その笑顔が本当に幸せそうな笑顔だったから、


これが幸せで大好きな気持ち…


そう、思った


『俺、ナマエの事好きだから。ナマエが望むなら何だってするから』


俺を本当に好きになってくれ…なんて、望んじゃいけない事なんだって、まるで知らせているかのように言葉が詰まる。


『どうしたのロクサス…』


そう言って俺を心配そうに見るナマエが…


『ロクサス…』


ちょっとだけ、ぼんやりと見えた


俺の気持ちが消えるんじゃなくて…まるで、ナマエ自身が消えてしまうかのように、薄く、ぼんやりとして…


『ナマエー』


『っ…何でもない。デミックスが呼んでるぞ』


デミックスの声に我に返る。


そうだよな、ナマエが消えるなんて事…でも、何でナマエが消えないなんて言い切る事が出来るんだ俺…


『じゃあまたね、ロクサス』


『っあ…』


駄目だ…


言い掛けて一瞬どこからか風が吹く。


薄紅色の柔らかい風…俺の視界を遮って、ナマエの手を取らせないように俺の動きを止めるような風…


何だ、今の…


『ナマエが消えるなんて…有り得ない、よな…』


誰に問い掛けたのなんか分からないのに…


誰かに否定して欲しかった…








(拝啓、ナマエ)


俺はどんな形でもナマエが好きだ…




















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091221めぐ(訂正100521)
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あきゅろす。
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