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告白しない青春

(告白しない青春)
伝わるから必要ない




鍵の掛かっていない屋上の扉を開け、見えた先に見知った顔を見付け、桃山は薄く笑う。見知った彼女…ナマエは桃山のサボり仲間で知られる程授業を良く抜け出す癖がある。進学せずに家業を継ぐと決めているからか、卒業すらどうでも良いと漏らす事もあった。


『よ、同類』


声を掛ければ眠たそうな顔を桃山に向け、屋上のフェンスに体重を掛けるナマエ。2限目は1年生が体育でグラウンドを使用し、煩くて眠る事が出来ないとぼやいていたナマエが、この時間に屋上に居る事は珍しい。それでもこの晴天の空模様、爽やかな風を身体に受ければどこか納得したように桃山は頷く。


『うちは青春を謳歌してるだけであって、サボりの桃山とはちゃうの』


『阿呆、サボりはサボりやろ』


ナマエの隣に身体を寄せ、空を見上げればナマエはサボりではないと言い張る。サボりは青春の一つだと常日頃から言うナマエは今日もまたサボりを正当化しようとする。然しながら尤もらしい桃山の返事に、今日は余程眠たいのか、そうとも言う…と欠伸を噛み殺しながら答えた。


『珍しいな、お前が屋上やなんて。てっきり教室で寝てるかと思ってたわ』


『桃山が来ると思ったから、今日は屋上に来てみた』


何に対しても素直に答えないナマエが唯一素直に答える事がある。ナマエは桃山に対する恋愛感情を隠す事はしない。抑、それが恋愛感情なのか、別の感情であるのかはナマエのみが知っている事。然しながら自分に会いに来たという事実は、桃山にとって悪い気はしない。


『変なところ素直やなァ…』


『うちはいつでも素直やもん』


実のところ、ナマエが自分に対してどんな感情を抱こうが桃山には関係ない。桃山に対する気持ちを素直に述べるが束縛はしない。桃山が誰と話そうが誰と寝ようが決して追求はしない。そんなナマエの隣は居心地が良い。都合良い付き合いではあるが、ナマエも桃山も、それで良い、この関係が続く事だけを願っていた。


『んーじゃ、俺も青春を謳歌しよかな』


ナマエに触れてもナマエは決して拒否反応を示さない。桃山の手が自分に触れている時間だけは、桃山は自分のもの。割り切った付き合いを望むナマエはその長いようで短い時間を何よりも大切に想う。桃山の腕に身体を預ければ、眩しい陽射しがナマエの目を眩ませる。


『次、体育やから跡付けんの無しやで』


『ははっ…了解、』


体育だけは出るのか、と学業が苦手な男子生徒のような口振りに桃山は苦笑いを浮かべ、ナマエの柔らかい身体を包み込んだ…



















(屋上、占拠完了のお知らせ)


彼女も無事、捕獲しました



















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100610めぐ
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