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(歩調合わせて)
もう一歩、踏み出して




追い付きたい、そう思っていた。


『ナマエ、』


『ちょ、ちょっと疲れただけ…っだから…っ』


彼の隣を一緒に歩く為に息を切らせて、後少しで追い付くと、更に一歩踏み出したところで燈治君が立ち止まって苦笑いを見せる。


必死なんだ、いつでも貴方の視界に入る為に


『もうちょっとゆっくり歩けって言ってくれりゃあ、ゆっくり歩くのによ』


『だ、駄目…追い付きたいから』


待って貰っても、結局また離れてしまう距離は繰り返してばかりで、いつまで経っても同じ距離。私が好きなのは、自分のペースを崩さない、有りのままの燈治君だ。だから、私が追い付かなければそんな彼は存在しない。


『…あのな』


『あ…っ』


ぐっと、腕を引かれて、距離が縮まる。大きな大きな、彼の手は力強いけれど優しく私の腕を引いて、それから、少しだけ口をもごもごさせて


『…こうして歩いたら、調度良いぐらいだろ』


『……あ、で、でも…』


掴んだ手を滑らせて、二人の指が絡まる。腕を引かれるのと同じぐらいの力強さなのに、少しだけまた優しく感じる組み合わさった燈治君の指。追い付きたいって思ってたのに結局待って貰っている。手を繋ぐ事は嬉しいけれど、それがちょっとだけ悔しいのも事実。


『引っ張ってやるから、手を離さず付いて来いよ』


『が、頑張る…っ』


手を繋いでも変わらない彼の速さに、引っ張られて少し速くなる私の歩速。だけどそれは、燈治君に追い付こうと、躓きそうになりながら歩いていた時の自分とは違う。


『燈治君……』


『んー』


前を向いて、歩く彼の表情は未だ見えないけれど


『大好き…』


『馬鹿野郎…恥ずかしい事平気で言うなよ』


だってだって、繋いだ手が、私に勇気を与えてくれたから…


















(前、後ろ、横斜め)




思ったんだ、君がいれば私の位置は関係ないって。



















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110903めぐ
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