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そんな片想いな話

護るのも、任務の一つ




幸村のいない夜、普段なら目を覚まさない微かな物音で目を覚まし、なまえは廊下に出た。そこにはいつもと雰囲気の違う佐助の姿…


『こんな時間に起きてるなんて珍しいね。寝れないの』

『あ、今起きたと言うか…その…』


まさか佐助の物音で起きました。等と言えばきっとまた弄られるだろうと思いなまえは言葉を濁す。もしこれが幸村であり幸村が忍であったならば忍ともあろう者が物音など、と叫び出すに違いない


『あ、俺が起こしちゃったのか。そりゃごめんよ』


何だか様子が違う。気のせいかもしれないが…少し心配になり、佐助を見つめながらなまえは横に腰掛けた


『あんまりにも月が綺麗だからさァ…見てみな、昼みたいに明るくて、灯なんか必要ない。こんな夜は平和で良い』


『そうですね…今日の月は、とっても綺麗…』


最近妙に忙しく、月など見る暇もなく仕事の連続。たまに早く終わったとしても直ぐに寝る為、月を見るのは久しぶりだった


『なまえちゃんは安心して寝てな。……旦那も、無事に帰って来るってもんだ』


『幸村様…大丈夫ですよね…』


なまえがまだ女中として仕え始めた頃に一度だけ、あの幸村が重傷で戻って来た事があった。何故か今日はその日の事を思い出す


『………まったく、旦那がそんなに良いのかねェ…』


『幸村様は…素晴らしい方で…………あ、わ…わ…』


なまえが素直に頷くと、佐助は一瞬悔しそうな顔をして、なまえを廊下に押し倒し、まるで始めからそうであったかのように普段と変わらぬ企みの笑みを浮かべた


『だったら、こんな時間に俺の前に出て来ない方が良いんでないの。…ただでさえ今日は旦那がいないんだ…ちょっと、無用心じゃない』


『さ…佐助さ……』


いつもの企みの笑みとは少し違う…。企み、と言うよりは妖笑に近い…そんな佐助の目をなまえは逸らす事も出来ずに見つめる事しか出来ない


『こう見えても俺様、健全な男子なんでね……このまま俺のモンにしてやろうか……』


『あ、あの……ッ』


佐助の身体がなまえの身体に重くのし掛かり、指がなまえの頬をなぞる。怖い……そう直感で身体を強張らせ、強く瞳を閉じた


『……冗談だよ』


『あ…』


身体の重みが抜け、うっすらと瞳を開けると、瞳に悲しみの色を宿した佐助がそこにいた。なまえの手を引いて起こし、なまえに背中を見せると口を開き


『…さっさと寝な。朝になりゃあなまえちゃんの大好きな旦那が帰って来るからさ。……俺はここでもう少し時間を潰してるよ』


『佐助様………』


幸村が何日も帰って来なかった夜。あの時も佐助はここにいて、なまえを護ってくれていた…。尤も、佐助は寝れないの一点張りで結局なまえが付き合うと申し出て、眠くなる目を擦りながらも徹夜したのだが


そう言えばあの夜は佐助様とお話ししていた途中から覚えていない気がする…


『あの、私ももう少し起きてます…何だか眠れそうにないし』


『………何があっても知らないぜ』


勿論、なまえには佐助のこの言葉の意味が理解出来なかったのだが…


次の朝、幸村が戻った頃には眠ったなまえを寝室へと運ぼうとしている佐助の姿があった














(月が彼を惑わした)


旦那、俺様が忠実な部下で良かったねェ





(そんな片想いなお話)














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091118めぐ(100316訂正)
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あきゅろす。
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