唯、一度──(MM配信中)
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もう止められない。
鋼の。君がそうしたんだ。
「ぁ──」
首筋に口唇を押し当てただけで、鋼のは従順な反応を示した。
「随分……ッ、慣れた反応をするんだな。鋼の───!
こういう経験があるんじゃないのかね?」
「ぁ、違うっ……そんなんじゃない」
鋼のの言う通り。そうじゃないのは解っている。
鋼のの色気は健康的で、しかも、経験があるならこんなに困惑した態度はしないだろう。
そのどちらもが、彼は肉体的な性欲を解放した経験が無いことを裏付けていた。
それ程に奥手なのか。それとも手が出せない程にウィンリィー嬢が大切か。
その無垢な肉体を自分が好きに出来る事への悦びから、私は首筋に歯を立て、その柔らかな肉を吸い跡を残した。
「ん、大佐……」
首筋の痛みすら今の鋼のには容易く快楽へ導き、甘い声で私を呼んだ。
それが酷く滑稽な気がして、その口唇を自らの口唇で塞ぐ。
「は‥ァ」
何度かノックするような軽いキスを繰り返すと、鋼のは口唇を物欲し気に開き、舌を招き入れる。
「んんん‥ッ! フ…──ァ」
私を求め、腕を回し、首の角度を変え、より深い口付けを要求する。
素直過ぎる反応に興奮する反面、堪らない虚しさを覚えた。
目の前に居る鋼のは、鋼のであって鋼のではない。彼の今の態度は薬に拠るもので、鋼のの意志では無いのだ。
どんなに肉体を求められても、それはほんの僅かな、刹那的な関係。
どんな手段を使っても心までは奪えないのだ。
だから───。私はそれで満足だ。
君の躰に刻み込もう。
私のこの狂いそうなくらいの愛憎を───。
忘れられないくらい、良くしてあげよう。
それに捕らわれ、真っ白な君の汚点となって残ればいい。
そう、……永遠に───。
狂った感情に、私は口唇を歪ませた。
もし今、鏡で自分の顔を見てしまったら、自分の狂気に満ちた醜さにゾッとする事だろうな。
表情を整え、鋼のの咥内から舌を引き抜いた。
「ン……ッ はっ」
物足りなそうな表情で仰ぎ見る鋼のの腰に跨り、自分の恥ずかしい姿を見せ付けるようにゆっくりと服を脱がしていく。
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