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唯、一度──(MM配信中)



 ………どうしてくれようか?

 私はこれで最後にする。それで満足なのだ。
 唯、一度。彼を手に入れたい。
 極上の思い出で終わらせる。
 その為に、鋼のから私を求めさせるように仕向けなくてはならないのだ。
 唯、奪うだけならば至極簡単。だが、それでは意味がない。

 そんな風に彼を奪っても楽しめはしない。

 私は鋼のをじっくりと味わい尽くしたい。


「此処で暫く休んでいっても構わんが、どうするかね?」
「──ん、そうさせて貰う」 

 自分の異常に戸惑った鋼のは余程動揺して居るのだろう。私の言葉に素直に従った。
 全ては計画通り。
 私は少しだけ彼を刺激してやればいい。
 ゆっくりと、彼が理性を無くしていくのを促せばいい。
 善意の仮面を纏い、髪を撫でる。

「凄い汗だな。苦しいか?」
「……るしぃ‥──」

 目を堅く閉じ喘ぎ、縋るように私の手を握り締めた。
 無機質で冷たいその指先の力加減から鋼のの感情が流れてきている様な気がする。
 今のこの状態がどれだけ魅惑的なのかを鋼のはどれだけ理解しているのだろうか?

「ど…うしょう、‥…オレ、なんか───。
どうしょう…ッ!」

 胸を上下させ譫言みたいに云い、潤んだ眸を此方に向ける。
 必死に私の、髪に触れる手に自分の両手を重ね、執拗に絡ませる。
 その力は強く、痛いくらいだ。
 眉を顰めたのは態とではない。普段から想像も付かない程に乱れた鋼のの姿に私は自分の欲望を抑えるのに必死だった。

「鋼の? どうしたいんだね」

 無防備な鋼の耳元自分の口唇を押し付け、低く唸った。
 予定ではもっと甘く囁く筈だったが、もうその余裕すらない。

「……!」

 驚いたのは、首筋に鋼のの腕が絡み付いて来たから───。

「こうしてて──!
こうしてると少し、楽っ……」

 ハッと荒く吐息した。

「鋼……の、」
「ダ‥メ……だ、離れないで──。少しだけでい‥から、こうしてて──」

 予想していたより早い鋼のの誘いに驚愕した私の身動ぎが、鋼のには避けるものだと感じたのか、懇願し首に回した腕の力を強め私を引き寄せた。
 その為、鋼のの唇が私の頬にあたり、耳に直接息遣いを感じられる。

「誘ってるのかね?」

 絞り出した台詞。自分の余裕はもう蜘蛛の糸の如く直ぐ様切れてしまいそうだった。それはもうほんの少しの───、

「‥──はっ、ぁ。もう、我慢出来ねぇ──!」

 ─── きっかけで。




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